時計仕掛けのロマック

横浜DeNAベイスターズ応援ブログ。外野席ではなく内野席から見るようなブログ。

【キャンプ注目選手】白崎浩之の分析と課題を考える。

あれは2003年だったか。読売ジャイアンツ松井秀喜ニューヨーク・ヤンキースに移籍し、「次の松井秀喜は誰になるのか、と次世代の主砲候補に世間の注目が集まった時期があった。数多くのネクスト・ゴジラ候補が挙げられる中で、いずれは松井秀喜に肩を並べる選手になるであろうと特に期待されていた2名の選手がいた。一人はカープ新井貴浩。もう一人はベイスターズ古木克明だった。あれから15年近く経過した。かたや広島優勝の立役者であり、リーグMVP、2000本安打達成と本当に松井秀喜のような名選手になった新井と、とっくにプロ野球のユニフォームを脱ぎ今はスーツで活動している古木。はっきりと明暗が別れた形だが、思えば「ロマン枠」という言葉は彼らのためにあったような気がする。もしも、古木が2003年以降もレギュラーを掴んでいたら、という妄想を未だにしているベイスターズファンは少なからずいるであろう。それだけ古木克明新井貴浩という選手には、夢や期待が詰まっていたのだ。

f:id:baymeshi:20170203072552p:plain

ベイスターズのキャンプが今年も幕を開けた。かつて中畑監督が「目を合わせて挨拶が出来る選手がいない」「声がぜんぜん出ていない」と嘆いた風景は、今は微塵も感じさせないほどグラウンドに熱が入っている。投手陣も初日からほとんどの選手がブルペン入りし、すでに実戦モードの選手もいたようだ。今年は本気で優勝を狙う、ポジションを奪い取る。そんな空気が伝わってきた。

ニコニコ動画でキャンプの映像風景が配信されるようになってからずっとキャンプの様子は見ているのだが、フリー打撃を見るだけでも選手の成長を感じ取ることが出来て面白い。桑原将志高城俊人は一昨年ぐらいから打球の伸びが格段に成長したと感じていたが、今年の桑原は体勢が崩れても鋭い打球を飛ばしている。山下幸輝にしても、乙坂智にしても、今年のフリー打撃を見ていると軸がブレずにずっと打ち続けているのが印象的だった。

その中で、圧巻のフリー打撃を見せていた選手がいた。今年でプロ5年目になる白崎浩之である。元々フリー打撃ではガンガン飛ばす選手だが、昨年のキャンプに比べてミスショットが明らかに減り、パワーだけなら外国人選手かと思わせるだけの飛距離を誇っていた。秋季キャンプまでは左足を上げるようなフォームだった気がするが、昨日の打撃練習では少しフォームを改良している。まだまだフォーム固めを徹底する期間だと思うが、モノになったら一体どんな成績を残すのか。今回は永遠のロマン枠であり、誰よりもソロホームランの似合う男、白崎浩之に注目して分析した。

/////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////

【特 徴】

思えば、白崎浩之のプロ初打席はヒットから始まった。代打で結果を残した白崎の勢いに乗せられ、金城龍彦サヨナラホームランを叩き込んだ試合が白崎のデビュー戦だった。「白崎が出塁すると何かが起こる」そんなジンクスがあった時期もあったが、通算13本のホームラン全てがソロホームラン、2016年の得点圏打率.146という数字が物語るように、今では「ベイスターズで最も勝負弱い男」という印象が強い選手になってしまった。

f:id:baymeshi:20170203051900p:plain

昨年は自己最多の92試合に出場。代打時における打率は.381と、代打の切り札として活躍を見せた一方で、得点圏打率は.146。チャンスではほとんど打てていなかった。白崎の打席を見てみると、ツボに入った時の打球は天性の物を感じる一方で、選球眼やファールでカットするといった技術に関してはまだ課題があるように感じた。狙い球ではないボールや、際どいコースのボールに手を出して凡退する場面が昨年は多かった印象だ。出塁率から打率を減算した数値で、「四死球によってどの程度出塁したか」を測るための指標であるIsoD(0.07から0.08であれば平均値)は0.03~0.04であり、平均的な打者よりも早めに手を出す傾向のある打者であるといえる。積極的に打つことがいい方向に向かう場合もあり、実際倉本寿彦IsoDが0.029と規定打席到達者で最低の数値だった。しかし、白崎の場合は打席における積極性を好成績に結びつけることは出来なかった。難しい球に手を出して凡退することが多かったのは今後の課題であろう。

ただし、2015年と比較して、三振率(何打席に1回の割合で三振をするか)は4.53から6.34に改善され、P/PA(一打席当たりの被投球数)も3.49から3.83へと上昇している。この2つのスタッツから、打席でボールを見る回数は増えたが、三振する割合は減少し、ゴロアウトなどの凡打が増える割合が上昇した、ということがわかる。一軍での試合経験が多くなり、簡単に三振することは少なくなったが、まだまだミスショットが多かったのが昨年だろう。

thepage.jp

ちなみに、このあたりのスタッツに関してはこの説明が一番詳しく解説されていたので、参考にするといいかもしれない。

f:id:baymeshi:20170203052047p:plain

©データで楽しむプロ野球http://baseballdata.jp/

上の図は2016年における白崎の球種別安打割合である。特徴として

①ストレート系の球種(カットボールなど)を苦手としている。

②昨年はチェンジアップがほとんど打てなかった。

と苦手な球種傾向がはっきりしていることがわかる。チェンジアップに関しては、2015年は.385と一番打ち込んでいた球種であり、比較的ブレーキング系の球種に関しては得意にしている傾向があったが、昨年はどの球種にも上手く対応出来なかったようだ。ストレートに関しては2015年も.232と苦戦しており、速球に負けないスイングを手に入れることが飛躍のきっかけになりそうだ。

【今後の課題】

www.youtube.com

キャンプでは足を上げてタイミングを取るフォームから、よりシンプルな動きになるよう取り組んでいるようだ。その結果、フリー打撃でミスショットが減った印象だが、このフォームを継続していけば課題である速球打ちにも上手く対応出来るようになるのではないか。

f:id:baymeshi:20170203051921p:plain

セ・リーグには白崎の他にも外国人並の長打力を持つ選手が何人かいる。その中でも昨年プロ初の2桁本塁打を放ち、飛躍の年になった中日・福田永将をピックアップし、白崎と成績を比較してみた。福田もプロ初打席初本塁打という華々しいデビューを飾りながら打撃フォームがなかなか安定せず、2軍生活の長い野球人生を送っていた。転機になったのが2015年で、オープン戦から打撃フォームが固定されると、今まで見たこと無いような飛距離の打球を飛ばすようになった。元々捕手だったので、読み打ちするスタイルだと思うが、ツボに入った時はナゴヤドーム上段まで運ぶ力がある。一方で、一年間フォームを維持するのには苦労したようで、昨年の出場試合数は89試合と、白崎とほぼ変わらなかった。

白崎と福田の成績比較で一番差が着いたのはストレートの安打率だった。元々ストレート系の球種には強い福田だったが、昨年は3割を超え、速球打ちに関しては自信を付けたといえる。また、P/PAの数値に関してはほとんど差が無かったが、初球打ちに関しては福田は.275と結果を残していた。2015年は.526と初球打ちに滅法強かった事から、ある程度対策は練られていたと思われるが、初球打ちが得意ではない白崎はこの辺りも課題と言えそうだ。

現状、宮﨑が2軍で調整し、シリアコもまだ実力が未知数だとすると、今の段階では白崎が一番サードのレギュラーに近い存在だと言える。本人も決意のコメントを残していたが、今年は白崎にとってターニングポイントになる一年になりそうだ。新井になるか、古木になるか。今シーズンの白崎浩之には注目である。

にほんブログ村 野球ブログ 横浜DeNAベイスターズへ
にほんブログ村

【新外国人】スペンサー・パットン投手の分析と起用法を考える。

あと数時間で2017年の春季キャンプが幕を開ける。沖縄で選手と共にキャンプインを迎える人、ニコニコ動画にかじりついて選手の動向を見守る人、夜のスポーツニュースを楽しみにしながら仕事や勉強する人。楽しみ方は人それぞれだが、去年までベイスターズの選手ではなかった選手が、初めてベイスターズの選手としてピンストライプのユニフォーム姿を見せるこの時期が私は一番好きだ。彼らの加入で今年のチームはどう変わるのか。選手分析を深めていくと自然とキャンプの見どころは増えていく。今年のキャンプはじっくり見ると面白い点がいっぱい見つかるかもしれないと期待している。

新外国人助っ人特集も今回で最後である。クローザー候補として山崎康晃とポジションを争うことになるであろうスペンサー・パットン投手を分析した。

/////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////

スペンサー・パットン 1988年2月20日(28歳)

f:id:baymeshi:20170201070617p:plain

アメリカ合衆国 イリノイ州シャンペーン郡アーバナ

f:id:baymeshi:20170201071820j:plain

人口約4万人の街、アーバナはあまり聞き慣れない地名だが、アメリカ中西部を代表する大学の1つであるイリノイ大学の本部キャンパスが立地しているため、理系のエリート学生が集まる街として知られている。ちなみに、厚切りジェイソンイリノイ大学アーバナ・シャンペーン校卒業生である。イリノイ大学がアーバナの文化の中心であり、美術館、博物館、図書館、多目的ホールに病院、さらには空港までもが大学の所有施設であり、街全体がキャンパスの一部といっても過言ではない。余談だが、クラインの出身地であるコロンバスは人口約78万人であり、相模原市の人口とだいたい同じ規模である。ウィーランドの出身地であるリノ、シリアコエリアンの出身地であるサンペドロ・デ・マコリスは人口約20万人なので、神奈川県でいえば厚木市茅ヶ崎市ぐらいだろうか。パットンの出身地アーバナが人口約4万人だとすると、三浦市南足柄市、寒川町ぐらいの規模と考えたほうがイメージしやすいかもしれない。

 2011年のMLBドラフト24巡目(全体726位)でカンザスシティ・ロイヤルズから指名され、6月12日に契約。一年目のルーキーリーグでは冴えない成績に終わったが、二年目にリリーフ投手として開花し、三年目となる2014年に3Aオマハ・ストームチェイサーズに昇格する。オマハではアウディ・シリアコの兄であるペドロ・シリアコ楽天・ペゲーロらと一緒にプレーしていた。パットンもオマハの主力クローザーとしてチーム2位の登板数を記録していたが、7月になるとジェイソン・フレイザーとのトレードでレンジャースに移籍する。

移籍後は傘下の3Aラウンドロック・エクスプレスに活躍の舞台を移すのだが、ここで前回触れたようにフィル・クラインと出会いを果たす。パットン、クライン、それに元巨人・ポレダはリリーフ投手として活躍していたが、他にも日本球界に縁のある選手が在籍していた。巨人のマイコラスと今年から阪神に加入するメンデスである。マイコラスはこの年メジャーと3Aをいったりきたりしていたが、ラウンドロックでは先発機会6試合で5勝1敗と結果を残していた。パットン、クラインとも成績を見るにセットアッパーとして起用されていたので、アメリカではマイコラスの後を受けて登板していた時もあったかもしれない。シーズン終盤ではレンジャースの選手として初のメジャー昇格を果たし、初勝利含む9試合登板と飛躍の一年になった。

翌年2015年もレンジャースのブルペンを任されることになるが、結果を残すことは出来ず、3Aラウンドロックに降格。この年はクラインだけでなく、阪神藤川球児、今年からヤクルトに加入するオーレンドルフ元日ハム・バースも一緒にプレーしている。3Aではセットアッパーの地位を固めつつあったが、メジャーでは結果を残すことなく11月にカブスへ移籍する。

カブス移籍後もメジャーでは結果を残せず3Aでは活躍する状態が続いていた。とはいえ、3Aアイオワカブスでは自己最多登板となる35試合に登板し、防御率0.75、11セーブとキャリアハイの結果を残していた。チームメイトになった川崎宗則とは仲良くしていたようだが、アイオワカブスには阪神マートンも在籍していたので、日本球界挑戦にあたって色々アドバイスはもらっているかもしれない。パットンが吉野家にハマっていたり、妙な関西弁を披露するようになったらきっと彼の影響だろう。

【特 徴】

f:id:baymeshi:20170201041100p:plain

3Aにおける3年間の平均奪三振率は12.9%、与四死球率は3.5%である。比較的この数字に近い選手でいえば、広島・ジャクソン(奪三振率11.7%、四死球3.0%)ソフトバンクバリオス奪三振率11.4%、与四死球率3.6%)といったあたりか。

f:id:baymeshi:20170201045138p:plain

昨年のパットンのLOB%(ランナーを背負った場面でどれだけ帰塁を防いだか測る指標)までは調べきれなかったが、防御率1.71、LOB率81.8%と結果を残したジャクソンと散々な結果に終わったバリオスでは成績に大きな違いが出ている。両者で一番差が開いたのは被打率だろう。特にストレートの被打率はジャクソンが.242、バリオスが.438と大きく明暗を分けた。パットンのストレートは.265(メジャーでの成績含む)となっており、ストレートに関してはジャクソン並の威力があるようだ。

一方で、四死球率は3%台、特に2016年は3Aでも3.8%と制球面に課題を残している。例えば、先頭打者を簡単に歩かせてしまうと球威もやや落ちるだろうから、狭いハマスタを本拠地にするクローザーとしては少し怖いデータである。フォームはシンプルな印象で、クイックモーションにも大きな問題は無さそうだ。

www.youtube.com

この動画ではほぼフォーシームを投げ込んでいる。ピッチングスタイルは平均球速150キロのフォーシームを中心に配球を組み立て、スライダー、チェンジアップを決め球として空振りを奪う感じだろうか。フォーシームはウィーランドのような綺麗な軌道ではなくやや沈む動きをする。チェンジアップ、スライダーともに被打率はメジャーでも2割台前半であり、日本でも決め球として通用する見込みがありそうだ。メジャークラスになるとフォーシームの平均球速150キロ程では打ち込まれる傾向があり、また、シンカー等の球種でゴロアウトを狙えなかったことがメジャーで通用しなかった要因と考えられる。来日後は平均球速が2~3キロ落ちるとしても、十分ストレートで押せる力はあると思われ、成績的にも広島・ジャクソン並の成績を残す事は予想可能ではないだろうか。

以上から、パットンの特徴としては

①平均奪三振率が高く、与四死球率はやや不安定なため、クローザーよりもセットアッパー向きか。

②やや変化のあるフォーシームを軸に、スライダー、チェンジアップをウィニングショットとして使う。

③GO/AO%を見る限り、フライアウトが多い傾向がある。シンカー系の球種習得が可能であれば、投球の幅は広がりそう。

【今後の課題と起用法】

f:id:baymeshi:20170201061800p:plain

2017年のベイスターズのクローザーはどうするか。2015年の状態が戻れば間違いなく山崎康晃で問題無いだろう。与四死球率が大きく悪化し(2015年1.8%→2016年3.6%)、ストレート被打率も悪化している現状だけに、山崎康晃がクローザーで収まるのかどうかはキャンプ、オープン戦の結果が全てになりそうだ。また、パットンがクローザーを務める場合は、いかにストライク先行で勝負できるかが鍵になる。ストレート、変化球ともに威力はあるだけに、ストライクゾーンで勝負していけば自ずと結果は残しそうな気はする。

f:id:baymeshi:20170201062627p:plain

昨年は不在だった「ストレートで押すタイプ」のセットアッパーが、パットンの加入で実現した。山崎、三上、パットンそれぞれタイプが違うため、この3人で7,8、9回を任せるのが一番理想の形である。田中健二朗須田幸太藤岡好明といった選手も絡めていけば、リーグ屈指のブルペン陣になるだろう。あとは監督の期待も大きい進藤拓也や、ベテラン大原慎司、林昌範、加賀繁らの復活にも期待したい。

にほんブログ村 野球ブログ 横浜DeNAベイスターズへ
にほんブログ村

【新外国人】フィル・クライン投手の分析と起用法を考える。

「クライン」という名前、皆さんは何を思い浮かべるだろうか。一番有名なのはクラインの壺で知られるドイツの数学者フェリックス・クラインだろう。サッカー好きならイングランド代表でリバプールの若きサイドバックナサニエル・クライン。ファッションに興味ある方ならカルバン・クラインの名前やブランドを一度は耳にしたことがあるはずだ。経済学部出身なら、アメリカの経済学者でノーベル賞受賞者であるローレンス・クラインの「ケインズ革命」「計量経済学」を習ったことがあるかもしれない。ガンダムマニアならきっとラクス・クラインが真っ先に思い浮かんだはずだ。

私はウィリアム・クラインという映画監督を思い浮かべた。アメリカ出身の写真家だった彼は、1966年、フランス・パリで一本の映画作品を作る。Qui êtes-vous, Polly Maggoo ? (邦題:ポリー・マグーお前は誰だ? )というちょっと変わったタイトルを付けられたこの映画は、当時のフランスのファッション業界を皮肉交じりに描いた作品だった。映画に流れる音楽が好きでサントラも探して買ったこの映画だが、内容は決して一般大衆受けを狙ったものではなかった。それでも、写真家という視点から描かれた奇妙な描写や構図、演出は映画というより「動く写真」であり、50年以上経過した現在でもカルト的な人気がある。

f:id:baymeshi:20170129032747j:plain

身長201センチ、体重116キロ。高田GM曰く「複数球団と争奪戦」になったという27歳の豪腕投手に、多くのベイスターズファンは山口俊の穴を埋める活躍を期待しているようだ。先程紹介した「ポリー・マグーお前は誰だ?」には「ポリー・マグー」という彗星のごとく突如現れた若きスーパーモデルが登場する。ファッション業界は「まるで鏡の向こう側からやってきたかのような」彼女の登場に色めき立ち、「彼女は一体何者なのだ?」と噂になりやがて騒動になっていく。

「フィル・クライン。お前は一体何者なのだ?」

というわけで今回はこの投手を分析し、起用法を考えた。

/////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////

フィル・クライン 1989年4月30日(27歳)

f:id:baymeshi:20170129031722p:plain

【人 物】

f:id:baymeshi:20170129033012p:plain

アメリカ合衆国  オハイオ州コロンバス出身。

オハイオ州の州都にあたるコロンバスは学術都市として知られており、オハイオ州立大学もコロンバスに立地している。早速Twitterパットン妙なやりとりしていたが、オハイオ州立大学はカレッジフットボール屈指の強豪チームオハイオステート・バックアイズ」を要することで全米中に知られている。収容人数101,568人という超巨大スタジアムオハイオ・スタジアム」には、きっとクラインも何度か足を運んだことだろう。ちなみにクライン自身オハイオ州立大卒業生ではない。

2011年のMLBドラフト30巡目(全体924位)でテキサス・レンジャーズから指名され、プロ入りする。指名順位は低かったがプロ入り後は着実にキャリアを重ね、2014年に3Aラウンドロック・エクスプレスに昇格する。この時チームメイトだったのがスペンサー・パットンだった。他にも日ハム・田中賢介元巨人・ポレダが在籍しており、日本球界との接点もあったようだ。この年はセットアッパーとして9試合に登板、18イニング連続無失点と完璧な結果を残し、レンジャーズの選手としてメジャー初登板を果たしている。メジャー昇格後もミドルセットアッパーとして17試合に登板。防御率2.84と結果を残した。クラインに遅れること約一ヶ月、パットンもこの年メジャーデビューを果たしている。

2015年以降は、3Aクラスでは先発投手として起用されることが多くなり、安定した結果を残している。一方、メジャー昇格後は主に救援での登板が多く、思うような結果を残すことは出来なかった。2016年はフィリーズと契約し、3Aリーハイバレー・アイアンピッグスでは主に先発投手として起用されていた。このチームには今季からヤクルトに加入するブキャナンも在籍している。共にリーハイバレーのローテーション投手であり、年齢も同じ27歳。今年はセ・リーグ同士で投げ合う機会も訪れるだろう。さながらアメリカ版今永昇太VS原樹理といったところか。

【特 徴】

f:id:baymeshi:20170129014032p:plain

3Aクラスでは平均して10%近い奪三振率を誇り、三振奪取能力に関しては優秀な成績を収めている。制球面でも3Aクラスにおける3年間の平均与四球率が2.93%と比較的安定した成績を残しており、制球面による不安は少なそうだ。直近の2016年は与四球率が2.1%、奪三振率は10.2%となっている。外国人投手が日本で成功する条件として制球面での安定性が求められるが、クラインの平均与四球率2.93%は広島・ジョンソン(2.60%)、阪神メッセンジャー(2.96%)と比較できる水準の数値である。昨年の与四球率2.1%となると、外国人先発投手ではソフトバンク・バンデンハーク(1.76%)に次ぐ成績となる。バンデンハーク奪三振率も10.10%と高い投手だが、3Aクラスの成績だけなら、クラインは引けをとらない成績を残している。

一方、メジャークラスになると、3年間の平均奪三振率が8.67%、平均与四球率は4.7%まで上昇してしまう。マイナーではストレート、スライダーなどの球種で空振りを取れていたが、メジャークラスになるとバットに当てる打者も多いため、ストライク先行の投球が出来なかったことがメジャー定着を果たせなかった要因だろう。

ピッチングスタイルはMAX153キロのフォーシームとスライダーを軸に、チェンジアップ、シンカー、カットボールといった球種を低めに投げ分ける。昨年は特にチェンジアップが有効だったようで、決め球としても使用しているようである。MAX153キロのフォーシームもメジャークラスにおいては平均球速に過ぎず、カットボールやシンカーも特徴的な変化をもたらすことが出来なかったため、昨年は被打率.250と平均的な数字だったスライダー以外の球種(フォーシーム含む)は3割近い被打率だった。とはいえ、日本球界であれば201センチの長身からフォーシーム、スライダーを投げ込まれると相当打ちづらい投手なのではないかと思う。

www.youtube.com

キャリアハイの成績を残した2014年の投球(救援投手として登板)では、ストレート、スライダーともにキレがあり、このままいけばレンジャースのセットアッパーを担えるだけの実力はあったように思える。

www.youtube.com

こちらは2016年フィリーズ移籍後のマウンドだが、スライダーは決め球として有効だろう。メジャーで打ち込まれた2015年においてもスライダーの被打率は.206とほとんど打たれていなかった。縦の変化もあるので、ストライクゾーンから落とされると打者は手を出さざるを得ないだろうし、クラインの場合はコースに投げ分ける制球力も備わっているため、打者からしたら厄介なボールだろう。

以上をまとめると、特徴としては

①3Aクラスでは奪三振率、与四球率は優秀であり、安定した成績が期待できる。

②ストレート、縦スライダーが軸であり、近年はチェンジアップも決め球として有効である。

③先発・リリーフ両方とも経験がある。

【今後の課題と起用法】

f:id:baymeshi:20170129031042p:plain

推定年俸は1億5000万円。フロントの期待も大きな選手である。ウィーランドパットンにも1億近い年俸を支払っており、アメリカの独立リーグからハミルトンブランドンを引っ張ってきた頃を思えば相当出世した感があるが、活躍するかは未知数だ。

動画やスタッツを見た印象だけで言えば、クラインソフトバンク・バンデンハークを見た時と同じ印象に思えた。長身から投げる角度のある投球で低めに制球されたら打ち崩すのは相当困難だろう。課題があるとすればクイックモーションやボークといった投球動作であり、おそらく他球団が攻略の糸口を狙うポイントもそこにあるはずだ。その点はウィーランドパットンも同じことが言えるため、キャンプの段階からしっかり修正に取り組んでほしい。

にほんブログ村 野球ブログ 横浜DeNAベイスターズへ
にほんブログ村

【新外国人】ジョー・ウィーランド投手の分析と起用法を考える。

早いものでブログを開設して一ヶ月が経過した。人間欲深いもので、比較的スローペースで更新する予定だったこのブログも、ブログ村に登録してからランキングを妙に気にするようになり、一つでも上の順位を目指すようブログ更新回数も急激に上がった。その結果、じわりじわりとブログを訪問していただける方も増えたようでなんだか嬉しい限りである。競争意識というのは一番のモチベーションかもしれない。そういう意味ではこのブログも横浜DeNAベイスターズもきっと同じだ。

headlines.yahoo.co.jp

競争意識でいえば、前回取り上げたシリアコも、今回取り上げるウィーランドも今年は「外国人枠」を争うライバル同士だ。怪我で離脱する事態がない限りロペスはおそらくレギュラーで確定だが、他の外国人枠は昨年勝負強さを見せたエリアンも含めて全く白紙の状態からスタートする。現時点でベイスターズが抱える外国籍の選手は6名。となると、確実に二人の選手は2軍で汗を流しながら一軍の機会を待つしか無い。

今日来日したウィーランドも、日本での新たな挑戦に対して自信を持っているようだ。果たしてウィーランドは先発枠、外国人枠の競争を勝ち取る事ができるのか。分析と起用法を考えた。

/////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////

ジョー・ウィーランド1990年1月21日(27歳)

f:id:baymeshi:20170126215159p:plain

【人 物】

f:id:baymeshi:20170127004142j:plain

アメリカ合衆国 ネバダ州リノ出身

ベイスターズにはアメリカ出身の選手がウィーランド含めて3名在籍しているが、ウィーランドは西部のネバダ州、パットンクレインは中西部に位置するイリノイ州オハイオ州であり、別の文化圏で育っている。ちなみに、かつてベイスターズに所属していたレス・ウォーランドオクラホマ州出身だ。

ネバダ州最大の都市はラスベガスだが、リノもアメリカで二番目に大きなカジノ施設を持つ都市であり、毎年多くの観光客が一攫千金を夢見てこの地を訪れている。“The Biggest Little City In The World”(世界最大の小都市)という街のキャッチフレーズを見るに、昔よくやったシムシティの街並みが思い浮かんだ。

2008年、MLBドラフトでテキサス・レンジャーズから4巡目(全体123位)指名され、2012年以降は3A以上のクラスに定着している。2012年、パドレスの選手としてメジャーリーグデビュー。ドジャース戦でプロ初登板初先発を果たすも結果を残すことは叶わず、その後は怪我(トミー・ジョン手術も一度経験している。)もあり、メジャーと3Aの間で奮闘していた。2016年はパシフィック・コーストリーグに所属する3Aタコマ・レイニアーズに所属。9月4日には週間MVPに輝くなど、14勝を挙げタコマの主力先発投手として活躍した。ちなみにタコマはマリナーズ傘下ということもあり、一時期は青木宣親とプレーしていたことになる。日本球界との繋がりで言えば、2015年に所属していた3Aオクラホマシティドジャースでは元広島・スタルツとも一緒にプレーしている。

【特 徴】f:id:baymeshi:20170126230312p:plain

ここ三年間は3Aでローテーション投手として活躍し、スポット的にメジャーリーグで先発機会を与えられているが結果を残すことはできなかった。3Aクラスでも防御率は3点台後半から5点台とかなり悪い印象だが、過去三年間のチームは打者有利のパシフィック・コーストリーグに所属していたこともあり、この数字でもおおよそリーグ平均の防御率となっている。

www.youtube.com

3Aにおける過去三年間の平均奪三振率は7.81%、平均与四球率は2.10%、ゴロアウトとフライアウトの比率を示すGO/AO%は平均で1.02%である。来日後、報道陣に対して「制球力に自信がある」と本人が語っていたが、与四球率が2.10%というのは制球力に優れている数字である。日本で活躍する投手の特徴として、制球力が一つの目安になるが、広島・ジョンソン(2.45%)、阪神メッセンジャー(2.91%)、9勝を挙げた2014年のモスコーソ(2.77%)と比べてもウィーランドのコントロールは遜色ないレベルだといえる。GO/AO%に関しては打球が飛びやすい気候でプレーしているということもあり、ややフライアウトが多い傾向にある。

www.brooksbaseball.net

トミー・ジョン手術を経験したこともあったが、今はその影響もなく、ストレートの最速は昨年で153キロ、平均球速は148キロとなっている。ピッチングスタイルとしては回転のきれいなストレートを軸に、チェンジアップ、ナックルカーブといった球種で球速差を出しながら抑えていく感じだろう。シンカー系の球種はほとんど使用していないようだが、フライボールピッチャーの傾向があり、今後はハマスタを本拠地とすることを考えると、シンカー系の球種や小さく変化する球種の習得は目指したほうが良さそうだ。

以上から、ウィーランドの特徴としては

①安定した制球力が武器で、四球から大崩れする投手ではない。

②ストレートにキレがあり、ピッチングスタイルはストレートが軸になる。

③フライアウトが多く、長打を打たれやすい傾向にある。

【今後の課題と起用法】

f:id:baymeshi:20170127001345p:plain

モスコーソも来日前は比較的制球力に優れていると評判のあった投手であり、ウィーランドと同じくフライアウトが多かったことがメジャーリーグで定着できない要因とされていた。来日後も前半戦は長打を浴びるケースが多かった記憶がある。しかし、ファームでツーシームを習得したことがきっかけで、徐々にゴロアウトが増えるようになり、結果9勝を積み上げ、ローテーション投手として活躍することが出来た。

www.baseball-lab.jp

この事はウィーランドだけでなく、同じ先発投手として期待されるクレインにも当てはまる話だろう。動画を見る限り、ストレートには威力を感じるし、日本式の柔らかいマウンドやボールを考えると平均球速は2~3キロ遅くなるかもしれないが、アメリカにいた時と同様にストレート主体のピッチングでもある程度通用すると思う。ただし、年間20試合以上先発機会があるとすれば、必ずどこかで打たれる時が来るだろう。モスコーソのようにいかにゴロアウトを取りにいくかを学ぶことは、ウィーランドが日本で成功を掴むか否か、重要なポイントになってくるのではないかと感じている。

にほんブログ村 野球ブログ 横浜DeNAベイスターズへ
にほんブログ村

【新外国人】アウディ・シリアコ選手の分析と起用法を考える。

春季キャンプのメンバーが23日発表された。私の予想は果たして当たったのだろうか。

f:id:baymeshi:20170124232616p:plain

よく見てみると今永昇太の名前を忘れていた。予想以前の問題である。主力メンバー、期待の若手選手は順当に宜野湾入りの切符は手にしたようだが、事前に1軍入りを明言されていたルーキー水野滉也や手術明けの高城俊人宮崎敏郎らは2軍からのスタートとなった。高城や宮崎、あと石川雄洋やベテラン勢はコンディションに問題なければ実戦練習が始まるキャンプ中盤から一軍に合流するだろう。水野に関しては、合同自主トレでは問題無さそうだったが、何らかの理由があり1軍入りを見送られた。大学最後の試合となった神宮大会では本調子からほど遠い投球に終わったが、この時は試合前に高熱を出していたようである。まだ何も情報がないので要因は不明だが、水野は140キロ後半まで出せるストレートとスライダー、シンカーを軸にした変化球のキレが生命線の投手なだけに、現段階ではMAXで投げられる状態ではないということだろう。キャンプはブルペンでの投球練習よりも下半身、体幹強化に時間を充てるかもしれない。

新外国人選手も全員一軍スタートになったようである。パットン、クレイン、ウィーランドメジャーリーグでもそれなりの実績があるためファン、首脳陣も期待も大きくかけられている様子だが、三塁手候補として獲得したシリアコに関しては活躍を懐疑的で見るファンが多い印象がある。独立リーグからNPB入りを果たした外国人助っ人は他球団でも何名かいたが、多くの選手が独立リーグ時代のような活躍を見せることなくユニフォームを脱ぐ結果になっていることが一番の理由だろう。シリアコはテスト入団という形で高田GMの目に止まった選手だが、当然独立リーグ出身の外国人助っ人が苦戦を強いられている事実は把握した上での支配下契約のはず。また、シリアコが「保険」という形での獲得ならさらにメジャークラスの三塁手獲得もあり得たが、その動きも無さそうだった。

こういった経緯から個人的にシリアコ選手に関心が湧き、

ひょっとしたら活躍が期待できるのではないかと思い、分析と起用法を考えた。

/////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////

アウディ・シリアコ 1987年6月16日(29歳)

f:id:baymeshi:20170125041153p:plain

【人 物】

f:id:baymeshi:20170125042808p:plain

ドミニカ共和国 サンペドロ・デ・マコリス州サンペドロ・デ・マコリス出身。

州都であるサンペドロ・デ・マコリスは多くの野球選手を輩出している街で、サミー・ソーサ、ロビンソン・カノといった選手もこの街の出身である。偶然だが、エリアンもサンペドロ・デ・マコリス出身である。年齢は2歳エリアンが上だが、ドミニカから13915キロ離れた土地でまさか同じ街の出身者がいるとは思わなかっただろう。ちなみに兄のペドロ・シリアコも野球選手であり、レッドソックスブレーブスで一時期レギュラークラスの扱いになっていた時期もあった。

一方弟のアウディは、デトロイト・タイガース傘下のチームに所属するなど主に3Aクラスで活躍したが、メジャーリーグ昇格は果たせなかった。最後に所属した3Aコロンバス・クリッパーズは2014年、2015年と2年在籍しており、今オフ日本球界に復帰した村田透や、元西武・C.C.リー、元日ハム・モルケンらとはチームメイトだった。そのこともあり日本球界についてはある程度知識や興味はあったのかもしれない。

2016年はBCリーグ石川ミリオンスターズに入団。主力打者として活躍し、打率はリーグ8位、本塁打2位、打点5位と打ちまくった。特に故障も無さそうなので、BCリーグの好成績から打撃のコツを掴んでいれば大きな掘り出し物になると同時に、独立リーグの選手にも希望を与えられる存在になれるだろう。

【特 徴】

f:id:baymeshi:20170125024440p:plain

シリアコの過去三年間の成績を元に2017年の成績を予想した。

打率、本塁打、打点の予想成績は、3A時代の平均を元に2016年のセ・リーグ規定打席(443打席)で換算したものである。

打撃面での特徴としては、

①三振が多い打者である。

②四球を選ぶタイプの打者ではない。

③3A時代はそれほど長打力を発揮できる打者ではなかった。

という点があげられる。

BCリーグでは三振する前にヒットを重ねていたこともあり三振率は大幅に改善されたが、3A時代は三振率が20%前後となっており、昨年で言えばヤクルト・バレンティン(21.6%)、広島・新井貴浩(19.7%)といった打者に近いため、ミート技術に関して自信のあるタイプではなさそうだ。また、BCリーグに入団後も四球率は6~7点台となっていることから、比較的早いカウントからバットを振りにいくタイプであると考えられれる。選球眼に関しても自信があるタイプの打者ではないだろう。

www.youtube.com

3A時代の打撃はコースに関わらず強振している。梶谷のようにボールを強く叩く事を意識してスイングするといった印象で、中日・ビシエドのような生粋のホームランバッターではないが、外角球でも芯で捉えればスタンドインするだけのパンチ力はあるように感じる。

www.youtube.com

こちらは昨年の石川ミリオンスターズでの打席。二球目のカーブにタイミングが合わず空振りするものの、もう一球カーブが続き、コースも甘かったことから狙い撃ちしたように強振した。とはいえ、ブレーキング系の球種に対しては少し苦手な印象を受ける。

守備に関しては3A時代はユーティリティプレイヤーとして出場し、2014、2015年は内野の全ポジションを守っている。キャリアのスタートは遊撃手から出場しており、地肩は強い方なのだろう。2014年も17試合で遊撃手を守っているが、守備率は.945と結果を残せなかったこともあり、ここ最近は主に三塁手一塁手を守る機会が多くなっている。ただし、2015年は三塁手で守備率.960、一塁手で.977となっており、決して守備の名手というわけではなさそうだ。

【今後の課題と起用法】

2017年の予想成績はあくまで3A時代の成績を元に作成したものなので、実際にどういう成績になるかはシーズンが始まってみないとわからないが、例えば筒香嘉智の後を打つ5番・三塁手としては迫力不足な印象は否めない。一軍クラスの投手相手に勝負するためにはミート技術、選球眼の精度を上げることが必須になってくる。積極的に振りにいくタイプの打者であることから、自分が相手投手なら外角中心の配球でボールゾーンに手を出させることを狙う。外角球に対して強振せずライト前に落とす技術や、ボールゾーンを見逃せるような対応力が身につけばそれなりの結果は残せるのではないか。あとはBCリーグNPBでは投手の平均球速も大きく変わるため、ストレートに対しての対応も大きな鍵になる。独立リーグの野球も熟知しているラミレス監督をはじめ、メジャーで実績のあるロペス、同郷のエリアンシリアコにとってはプレーしやすい環境は整っているため、前評判を覆す活躍を期待したい。

にほんブログ村 野球ブログ 横浜DeNAベイスターズへ
にほんブログ村

【広島東洋カープ編】なぜ新井貴浩は護摩行に向かうのか。

「声を出さないといけないというか、

出さないと気を失っていく。

そんな感じがありました」

f:id:baymeshi:20170123004027j:plain

www.nikkansports.com

セ・リーグの他球団分析も広島東洋カープ編で最後になった。昨年は日本全国のカープファンによる熱烈な声援に押され、セ・リーグ25年ぶりの優勝を果たした。カープ快進撃の象徴だった黒田博樹は引退したが、今年も昨年の勢いそのままにセ・リーグの中心としてベイスターズの前に立ちはだかるチームであることは間違いない。

何故カープはこんなにも強いのか―。その答えの一つに、毎年シーズンオフに新井貴浩が行う護摩(ごまぎょう)が考えられる。おそらく殆どの人は護摩行を体験したことが無いであろう。護摩行を終えた新井貴浩の顔面には多くの火傷の痕跡が残され、いかにも苦行であることを思い知らされるが、本人はすがすがしい表情を見せて達成感をメディアに語っている。護摩行をやらないと一年が始まった気がしない」なんてコメント、おそらく私は生涯で一度も言うことはない。しかし、昨年はついに長年の祈願が成就し、カープ25年ぶりの優勝を勝ち取る結果になった。こうなると我々は新井の護摩行パワーを見せつけられたと言ってもいい。実際、今年は堂林翔太石原慶幸護摩行に参加している。ベイスターズの選手全員で護摩行したら一体どんなことになるのか―。妙な期待は膨らむが、その前にそもそも「護摩行」とは一体なんだろうか?

現世での祈願成就を目指して祈りを捧げるという密教の修法。

護摩行またはお火焚きとは燃え上がる炎の前で全身全霊願いを込めて唱える煩悩を炎と一緒に焼き尽くす修行です。

その意義は呪術的な強い祈りの力をもって願いを叶えようというものです。

護摩の炉に細長く切った薪木を入れて燃やし、炉中に種々の供物を投げ入れます。

火の神が煙とともに供物を天上に運び、天の恩寵にあずかろうとする素朴な信仰から生まれたもので火の中を清浄の場として仏を観想します。

護摩は、紀元前2000年頃インドで始まり平安時代の頃に日本に伝わったとされています。

出典:護摩行・祈祷|日本の修行

日本の密教が独自に発展した修行が護摩行なんだろうと勝手に思っていたが、元々の起源はインドのヒンドゥー教の基礎になっているバラモン教の宗教儀礼のようである。火や水、風といった自然物に対する信仰がバラモン教聖典ヴェーダ』の教えであり、自らが行ってきた悪事・雑念(新井の場合はチャンスに打てないとかだろうか)が来世の運命を決定づけるという「輪廻転生」の考えが元になっているのが護摩行のようだ。それが仏教ととも日本に伝わり、密教の修行として今日も護摩寺では護摩行が行われている。ということは、インドでもまだ護摩行に近い宗教儀礼は残されているのかもしれない。

護摩行だけでなく、近年はスポーツ界でメンタルトレーニングというのが注目されるようになっている気がする。常日頃から野球におけるメンタルコントロールの重要性を訴えているラミレス監督もそうだが、移籍した山口俊もメンタルコーチを雇い心身面での成長が昨年の好成績に繋がったと言ってもいい。護摩行による苦行や達成感がいい意味での開き直りにつながっているとしたら、メンタルトレーニングとして効果もあるのだろう。実際、昨年の得点圏打率は好成績を残している。

護摩行の話はこのへんで終わるとして、広島東洋カープの分析に入る。

/////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////

広島東洋カープの分析】

チーム打率、チーム防御率ともにセ・リーグ1位であり、シーズン89勝を挙げるなど、交流戦明けから投打ともに他球団を圧倒する試合展開が多かった。上位打線は1番・田中広輔、2番・菊池涼介、3番丸佳浩で固定され、下位打線も鈴木誠也安部友裕と好調な打者がいたことからどこからでも得点できる理想の打線が完成していた。投手陣は前田健太の移籍、黒田博樹のコンデイション面での懸念もあり、開幕前は苦戦が予想されたが、野村祐輔、ジョンソンの2枚看板がキャリアハイの成績を残し、黒田博樹も10勝を挙げ、ルーキー岡田明丈も後半戦からローテーションに定着するなど、先発陣は一年間安定した結果を残した。救援陣もクローザー・中崎翔太を中心に、ジャクソン、ヘーゲンズ、今村猛といった選手がフル回転した。シーズンオフは比較的静かな動きにとどまり、ドラフトではストレートに力がある加藤拓也、左の床田寛樹と2名の大学生を指名したが、それ以外は高橋昂也、坂倉将吾、アドゥワ誠ら高卒ルーキー4名を指名。新外国人選手もリリーバータイプのブレイシアのみとなっており、引退した黒田博樹の穴を誰が埋めるのかが連覇に向けての重要課題である。

 ---------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

【投手陣】

f:id:baymeshi:20170122233428p:plain

実を言うと、昨年のチーム防御率は2015年を下回る成績だった。前田健太の穴はそう簡単に埋まることはなく、野村やジョンソンによる活躍もあったが全体的な失点数も20点ほど多い。とはいえ戦前の予想ではもっと投手陣の指標は悪化すると見られていたが、チーム防御率セ・リーグ1位になる大きな要因は救援陣の好投にあった。

f:id:baymeshi:20170122233330p:plain

先発投手がQSを達成し、救援陣がリードを守る試合展開になればほとんどの試合で勝利していた。強力打線の高い援護率もあり、シーズン通してカープは安定した試合運びが多かった印象だが、実際にホールド数、QS試合の勝率はセ・リーグ1位だった。オフの補強でセットアッパーとして活躍が見込まれるブレイシア、加藤拓也が加入し、ブルペン陣はさらに競争が激しくなりそうだ。

www.youtube.com

ヤクルト・渡邉大樹三塁打を打たれた打席は完全に失投で、大学生相手なら空振りを取れていたかもしれないが完璧に捉えられている。また1打席に何球かは甘い球が真ん中に集まる傾向にある。ほとんどストレートを投げているが、スプリットやカーブといった球種もあるだけに、実際プロでどういう投球するかはわからないが、まだ課題は多い印象である。とはいえ、一昨年ぐらいの中崎翔太も同じような力投型だったが、まさかクローザーとして活躍するとは思わなかったので、ストレートの被打率が向上したら一気に開花する可能性もある。

 ---------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

【野手陣】

f:id:baymeshi:20170123000941p:plain

f:id:baymeshi:20170122230919p:plain

一方、打線、走塁関連の指標は大きく成績が向上した。特に、盗塁数は選手構成はほとんど変化しなかったのに劇的に増加し、秋季キャンプからの走塁改革が実を結んだ形になった。盗塁数が増えたことで犠打数も大きく減少し、より攻撃的なスタイルで戦っていたことがわかる。とはいえ、キャリアハイの成績を収めた選手が多かっただけに、しっかり対策を練ってくるであろう今年は昨年と比べて思うような攻撃が出来ない試合も増えるだろう。ブレイクが期待される西川龍馬、野間峻祥やベテランの天谷宗一郎小窪哲也赤松真人らが主力選手の不調、怪我をどれだけカバーするかが重要になりそうだ。新井貴浩に同行し護摩行を受けた堂林翔太にも成果が求められる。

 ---------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

【キャンプの注目ポイント】

今キャンプ最大の目標は黒田博樹の穴を埋める先発選手の発掘だろう。24試合の先発機会、151イニングの投球回数を投げぬいたベテラン右腕の穴を一人の投手で埋めるのは並大抵ではないが、打線の援護率、救援陣の安定を考えると最低限5イニング任せられる先発がローテーション投手とは別に3人は欲しいところである。野村、ジョンソン、岡田がシーズン通して一軍にいることが前提で、先発に転校するであろう大瀬良大地、ヘーゲンズに加え、福井優也九里亜蓮、戸田隆矢、薮田和樹らが対外試合、オープン戦でしっかり成績を残すことが重要になってくる。おそらく今シーズンはカープ以外の5球団が重点的にカープ対策を練ってくるはずなので、2年続けて5点台近い援護率は過度に期待できない。となると、先発投手陣がどれだけ力を発揮できるかでシーズンは変わるため、一軍経験のない中村祐太、藤井皓哉、高橋樹也を含めてどれだけ若手投手を対外試合に抜擢するかに注目したい。

にほんブログ村 野球ブログ 横浜DeNAベイスターズへ
にほんブログ村

宜野湾キャンプ参加選手と宜野湾の天気を予想する。

f:id:baymeshi:20170122064708p:plain

こんな海の側にあるのか宜野湾球場。

 

春季キャンプまであと8日である。各球団キャンプメンバーが発表されるなど、球春幕開けに向けて動きも慌ただしくなってきた。ベイスターズも明日23日にもキャンプメンバー発表と報じられ、一軍メンバーの予想を考えている人も多いのではないか。というわけで、今回はその流れに便乗して、一軍メンバーの予想をしてみた。

予想の発表の前に、過去の一軍メンバーはどんな感じだったのか調べて見る必要があると思い、2015年、2016年の一軍メンバーを図にしてみた。

/////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////

f:id:baymeshi:20170122040031p:plain

f:id:baymeshi:20170122040122p:plain

過去数年を見ても、「投手20名」「合計38名」は変わらないようだった。また、新人選手が抜擢されるかどうかは各年ばらつきがあるものの、基本的には移籍選手、助っ人外国人選手は全員一軍キャンプ入りを果たしているようである。新戦力を直接見極めたいと考えるのはラミレス監督になっても変わらなかったので球団方針なのだろう。

headlines.yahoo.co.jp

今年はラミレス監督が「大卒・社会人の新人選手は全員一軍スタート」と明言しているので、濱口遥大、水野滉也、尾仲祐哉 、進藤拓也、狩野行寿、佐野恵太は確定。新戦力の平良拳太郎、パットン、ウィーランド、クレイン、シリアコも一軍濃厚と見ていいだろう。田中浩康も新戦力なのだが、後藤武敏に次ぐ野手で2番目に高い年齢を考慮すると2軍調整の方がいいかもしれない。

f:id:baymeshi:20170122042452p:plain

あとは主力選手、期待の若手選手を入れていくとあっという間に予想一軍メンバー38名の名前が埋まった。一軍経験のない選手で言えば、飯塚悟史、網谷圭将、青柳昴樹の3名を入れた。いずれも秋季キャンプ、台湾ウィンターリーグで名を挙げた選手であり、首脳陣の期待も大きい選手である。網谷は去年一時期だけ1軍キャンプに抜擢されたが、他の2人も初の1軍キャンプ抜擢となれば相当プレッシャーもあるはずだ。開幕一軍に向けてはまだ課題も多いが、まずは2月12日の紅白戦でのアピールに期待したい。

投手は自主トレ中にアクシデントが無ければおおよそこんな感じのメンバーだろう。ベテランの域に入る藤岡好明小杉陽太に代わって国吉佑樹福地元春平田真吾が入る可能性はあるが、主力リリーバーということで一軍メンバーに入れた。

一方迷ったのが野手の方である。怪我で万全ではない石川雄洋を外すのは仕方ないとして、宮崎敏郎飛雄馬白根尚貴あたりは一軍メンバーにいれるべきか相当迷った。特に宮崎は主力といってもいい立場だけにコンディションに問題なければ一軍入りはまず間違いないだろう。しかし、秋季キャンプの体調不良による離脱や、ルーキー佐野や狩野が抜擢されるのを見るに最初は2軍キャンプ地の嘉手納からスタートし、紅白戦や実戦の始まる第三クール(11日~15日)から一軍合流ということも考えられそうだ。

f:id:baymeshi:20170122050155p:plain

キャンプの練習は基本的に4つの班に分けて行われる。投手は年齢、役割ごとに4~6人の班で構成され、野手はポジション別に4~5人の班で構成される。梶谷隆幸、筒香嘉智ら打線の主軸を担う2人は、ロペスら外国人組と班が一緒になることが多いようだ。練習メニューによっては班のメンバーは変わるため、秋季キャンプ以降はほとんど一・三塁手としてノックを受けている網谷は、重盗対策などの捕手専用の練習メニューには参加せず内野手として投内連携やノック練習に参加するかもしれない。

f:id:baymeshi:20170122055857p:plain

今年も実戦機会の多いキャンプになりそうだ。22日の段階でキャンプ中に行われる対外試合の日程が発表されているのはセ・リーグでは巨人、中日、ヤクルトだけだ。巨人は練習試合が3試合、中日、ヤクルトは5試合で、去年の記憶から行くと広島、阪神も3~5試合程度だったので、対外試合数だけで言えばベイスターズの練習試合9試合はダントツで多い。これだけ試合数が多いと、若手選手のアピール機会は増える一方で、第三クール以降は基礎練習にかける時間が足りなくなる可能性もある。とはいえ、今年はWBC本戦が控えていることから、韓国代表との練習試合が組めた事は若手選手にとっていい経験になるのではないか。もしかしたらヤン・ヒョンジュンが出てくるかもしれないし。

/////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////

www.tenki.jp

ちなみに2月の沖縄の天気は平年並か、平年より曇りや雨の日が多いようだ。気温も平年並みかやや寒いとの予測がされているので、練習試合も何試合か雨で中止になる可能性もあるかもしれない。

www.accuweather.com

沖縄キャンプへ向かう予定の人はこちらのサイトも参考にするといいかもしれません。

でも、沖縄の天気はアテにならないって沖縄出身の知り合いは言ってました。

にほんブログ村 野球ブログ 横浜DeNAベイスターズへ
にほんブログ村