時計仕掛けのロマック

横浜DeNAベイスターズ応援ブログ。外野席ではなく内野席から見るようなブログ。

【キャンプ注目選手】白崎浩之の分析と課題を考える。

あれは2003年だったか。読売ジャイアンツ松井秀喜ニューヨーク・ヤンキースに移籍し、「次の松井秀喜は誰になるのか、と次世代の主砲候補に世間の注目が集まった時期があった。数多くのネクスト・ゴジラ候補が挙げられる中で、いずれは松井秀喜に肩を並べる選手になるであろうと特に期待されていた2名の選手がいた。一人はカープ新井貴浩。もう一人はベイスターズ古木克明だった。あれから15年近く経過した。かたや広島優勝の立役者であり、リーグMVP、2000本安打達成と本当に松井秀喜のような名選手になった新井と、とっくにプロ野球のユニフォームを脱ぎ今はスーツで活動している古木。はっきりと明暗が別れた形だが、思えば「ロマン枠」という言葉は彼らのためにあったような気がする。もしも、古木が2003年以降もレギュラーを掴んでいたら、という妄想を未だにしているベイスターズファンは少なからずいるであろう。それだけ古木克明新井貴浩という選手には、夢や期待が詰まっていたのだ。

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ベイスターズのキャンプが今年も幕を開けた。かつて中畑監督が「目を合わせて挨拶が出来る選手がいない」「声がぜんぜん出ていない」と嘆いた風景は、今は微塵も感じさせないほどグラウンドに熱が入っている。投手陣も初日からほとんどの選手がブルペン入りし、すでに実戦モードの選手もいたようだ。今年は本気で優勝を狙う、ポジションを奪い取る。そんな空気が伝わってきた。

ニコニコ動画でキャンプの映像風景が配信されるようになってからずっとキャンプの様子は見ているのだが、フリー打撃を見るだけでも選手の成長を感じ取ることが出来て面白い。桑原将志高城俊人は一昨年ぐらいから打球の伸びが格段に成長したと感じていたが、今年の桑原は体勢が崩れても鋭い打球を飛ばしている。山下幸輝にしても、乙坂智にしても、今年のフリー打撃を見ていると軸がブレずにずっと打ち続けているのが印象的だった。

その中で、圧巻のフリー打撃を見せていた選手がいた。今年でプロ5年目になる白崎浩之である。元々フリー打撃ではガンガン飛ばす選手だが、昨年のキャンプに比べてミスショットが明らかに減り、パワーだけなら外国人選手かと思わせるだけの飛距離を誇っていた。秋季キャンプまでは左足を上げるようなフォームだった気がするが、昨日の打撃練習では少しフォームを改良している。まだまだフォーム固めを徹底する期間だと思うが、モノになったら一体どんな成績を残すのか。今回は永遠のロマン枠であり、誰よりもソロホームランの似合う男、白崎浩之に注目して分析した。

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【特 徴】

思えば、白崎浩之のプロ初打席はヒットから始まった。代打で結果を残した白崎の勢いに乗せられ、金城龍彦サヨナラホームランを叩き込んだ試合が白崎のデビュー戦だった。「白崎が出塁すると何かが起こる」そんなジンクスがあった時期もあったが、通算13本のホームラン全てがソロホームラン、2016年の得点圏打率.146という数字が物語るように、今では「ベイスターズで最も勝負弱い男」という印象が強い選手になってしまった。

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昨年は自己最多の92試合に出場。代打時における打率は.381と、代打の切り札として活躍を見せた一方で、得点圏打率は.146。チャンスではほとんど打てていなかった。白崎の打席を見てみると、ツボに入った時の打球は天性の物を感じる一方で、選球眼やファールでカットするといった技術に関してはまだ課題があるように感じた。狙い球ではないボールや、際どいコースのボールに手を出して凡退する場面が昨年は多かった印象だ。出塁率から打率を減算した数値で、「四死球によってどの程度出塁したか」を測るための指標であるIsoD(0.07から0.08であれば平均値)は0.03~0.04であり、平均的な打者よりも早めに手を出す傾向のある打者であるといえる。積極的に打つことがいい方向に向かう場合もあり、実際倉本寿彦IsoDが0.029と規定打席到達者で最低の数値だった。しかし、白崎の場合は打席における積極性を好成績に結びつけることは出来なかった。難しい球に手を出して凡退することが多かったのは今後の課題であろう。

ただし、2015年と比較して、三振率(何打席に1回の割合で三振をするか)は4.53から6.34に改善され、P/PA(一打席当たりの被投球数)も3.49から3.83へと上昇している。この2つのスタッツから、打席でボールを見る回数は増えたが、三振する割合は減少し、ゴロアウトなどの凡打が増える割合が上昇した、ということがわかる。一軍での試合経験が多くなり、簡単に三振することは少なくなったが、まだまだミスショットが多かったのが昨年だろう。

thepage.jp

ちなみに、このあたりのスタッツに関してはこの説明が一番詳しく解説されていたので、参考にするといいかもしれない。

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©データで楽しむプロ野球http://baseballdata.jp/

上の図は2016年における白崎の球種別安打割合である。特徴として

①ストレート系の球種(カットボールなど)を苦手としている。

②昨年はチェンジアップがほとんど打てなかった。

と苦手な球種傾向がはっきりしていることがわかる。チェンジアップに関しては、2015年は.385と一番打ち込んでいた球種であり、比較的ブレーキング系の球種に関しては得意にしている傾向があったが、昨年はどの球種にも上手く対応出来なかったようだ。ストレートに関しては2015年も.232と苦戦しており、速球に負けないスイングを手に入れることが飛躍のきっかけになりそうだ。

【今後の課題】

www.youtube.com

キャンプでは足を上げてタイミングを取るフォームから、よりシンプルな動きになるよう取り組んでいるようだ。その結果、フリー打撃でミスショットが減った印象だが、このフォームを継続していけば課題である速球打ちにも上手く対応出来るようになるのではないか。

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セ・リーグには白崎の他にも外国人並の長打力を持つ選手が何人かいる。その中でも昨年プロ初の2桁本塁打を放ち、飛躍の年になった中日・福田永将をピックアップし、白崎と成績を比較してみた。福田もプロ初打席初本塁打という華々しいデビューを飾りながら打撃フォームがなかなか安定せず、2軍生活の長い野球人生を送っていた。転機になったのが2015年で、オープン戦から打撃フォームが固定されると、今まで見たこと無いような飛距離の打球を飛ばすようになった。元々捕手だったので、読み打ちするスタイルだと思うが、ツボに入った時はナゴヤドーム上段まで運ぶ力がある。一方で、一年間フォームを維持するのには苦労したようで、昨年の出場試合数は89試合と、白崎とほぼ変わらなかった。

白崎と福田の成績比較で一番差が着いたのはストレートの安打率だった。元々ストレート系の球種には強い福田だったが、昨年は3割を超え、速球打ちに関しては自信を付けたといえる。また、P/PAの数値に関してはほとんど差が無かったが、初球打ちに関しては福田は.275と結果を残していた。2015年は.526と初球打ちに滅法強かった事から、ある程度対策は練られていたと思われるが、初球打ちが得意ではない白崎はこの辺りも課題と言えそうだ。

現状、宮﨑が2軍で調整し、シリアコもまだ実力が未知数だとすると、今の段階では白崎が一番サードのレギュラーに近い存在だと言える。本人も決意のコメントを残していたが、今年は白崎にとってターニングポイントになる一年になりそうだ。新井になるか、古木になるか。今シーズンの白崎浩之には注目である。

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