【3月14日】日ハム戦・濱口遥大の投球を振り返る
侍ジャパンvsキューバ戦の裏でひっそりと行われていた札幌ドームでのナイトゲーム。試合前にスタメン予定だった梶谷隆幸が腰の違和感でスタメン回避するという事態に見舞われたが、代わって3番ライトに抜擢された乙坂智は現在打撃好調で、荒波翔、佐野恵太といったスタメンを外れた外野手達も好調を維持しているため、打線に関してさほど大きな影響はなさそうだ。オープン戦首位打者のシリアコの前にランナーを貯められるよう、桑原将志、田中浩康の1,2番の働きが鍵になりそうだ。
ベイスターズ先発はドラフト1位濱口遥大が先発。デーゲームでは広島のドラフト1位加藤拓也が5回1失点と好投し、オープン戦ながらプロ初勝利を挙げた。ロッテのドラフト1位佐々木千隼も12日にベイスターズ打線の前に立ち塞がり、5回7奪三振1失点の投球でプロ初勝利を手にしている。相手は昨年の日本一チームだが、強気のピッチングでプロ初勝利を物にしたい。ファイターズ打線は故障者が多いこともありベストメンバーを組めない状態ではあるが、この試合で大谷翔平が3番指名打者で復帰する。中田翔に代わる4番岡大海や西川遥輝、近藤健介らはまだ本調子ではないとはいえ、大谷の前後にランナーを貯めると厳しい試合展開になりそうだ。
大谷翔平の引き立て役になってしまった感のある試合ではあったが、濱口のデビュー戦としては上々だったのではないかと思う。日ハム先発の高梨はストレートに力があり5回無失点。濱口もランナーを背負う場面が続きながら粘り強い投球を見せ、5回2失点という結果だった。相手投手から点をなかなか奪えない試合展開で、先制点を与えてしまうとやはり分が悪い。課題の制球面も4四球と精度に欠いた部分もあるが、週末のウィーランド、クラインのように簡単に崩れることはなかった事は評価出来るのではないか。傾斜が高く、マウンドも硬い札幌ドームのマウンドは、濱口のピッチングを最大限に活かせる球場だったということもあるだろうが、この試合のような粘り強い投球ができればシーズンでも先発の役割を果たせそうではある。
打線は7回に二番手の谷元を攻め、好調シリアコ、白崎の二人でチャンスメークし、嶺井と関根の連続タイムリーで反撃。その後も最終回に鍵谷から逆転を狙うものの、結局5-3で敗北。オープン戦3連敗で2015年の交流戦から続く日ハム戦の連敗も7まで伸びた。(連敗は公式戦だけだが)
【濱口遥大】△
この日オープン戦初先発だった濱口遥大のデビュー戦は、5回を投げ97球、被安打3、与四死球4で2失点という内容だった。投球を振り返ってみると、ストレートに力がありこの日の最速は149キロ。平均でも145~147キロを計測しており、左投手としてはプロでも平均球速が速い部類になる。これだけでも充分武器になるため、コースに決まった時はなかなか打てないだろうという印象である。時折左打者の顔付近にボールが荒れる時があり、自分が打者なら対戦したくないタイプの投手である。
ストレートに球威があったため、決め球であるチェンジアップの精度も良かった。特に日ハム打線の一巡目はチェンジアップに対してかなり手を焼いていたようである。この日奪った併殺打は2つ。ランナーを背負ってもストレートとチェンジアップのコンビネーションで上手くタイミングをずらし、要所で内野ゴロを打たせることが出来ていたため、崩れそうで崩れない粘りの投球を見せることが出来た。
課題と言われた制球面は、前回登板のロッテとの練習試合に比べれば制球は安定したのではないか。基本的にはストライク先行の投球は出来ていたが、5回を投げ終わるのに97球を要し、四球も4つ与えている。ストライク先行のカウントに追い込まれるが、そこから並行カウント、フルカウントと簡単に討ち取られないように粘る打者が多いのは日ハム打線の特徴なので、濱口からすると少々相性の悪い相手だったかもしれない。
3回裏の先頭打者、中島卓也には
投球数 | 球種 | 球速 | 結果 | BSO | |
---|---|---|---|---|---|
<1 | 43 | スライダー | 120km/h | 見逃し | 0 1 0 |
<2 | 44 | スライダー | 117km/h | 見逃し | 0 2 0 |
●3 | 45 | ストレート | 147km/h | ボール [高めのつり球] |
1 2 0 |
★4 | 46 | チェンジアップ | 124km/h | ファウル | 1 2 0 |
●5 | 47 | ストレート | 146km/h | ファウル | 1 2 0 |
<6 | 48 | スライダー | 129km/h | ボール | 2 2 0 |
★7 | 49 | チェンジアップ | 126km/h | ファウル | 2 2 0 |
●8 | 50 | ストレート | 149km/h | ボール | 3 2 0 |
●9 | 51 | ストレート | 147km/h | ファウル | 3 2 0 |
●10 | 52 | ストレート | 147km/h | ファウル | 3 2 0 |
●11 | 53 | ストレート | 145km/h | ファウル | 3 2 0 |
★12 | 54 | チェンジアップ | 128km/h | ファウル | 3 2 0 |
<13 | 55 | スライダー | 121km/h | ファウル | 3 2 0 |
●14 | 56 | ストレート | 147km/h | 四球 |
4 2 0 |
2球であっさり追い込んでから14球粘られて先頭打者を歩かせてしまう。大学時代はカーブやフォークも試していたそうだが、試合で使える球種が少ない分、ストレートもチェンジアップもタイミングを合わされるとなかなか打者を打ち取るのに苦しむという課題が浮き彫りになった。
5回裏も中島卓也は7球粘って四球を選ぶが、
投球数 | 球種 | 球速 | 結果 | BSO | |
---|---|---|---|---|---|
<1 | 87 | スライダー | 119km/h | 見逃し | 0 1 1 |
<2 | 88 | スライダー | 120km/h | ボール | 1 1 1 |
<3 | 89 | スライダー | 121km/h | ボール | 2 1 1 |
<4 | 90 | スライダー | 121km/h | 空振り | 2 2 1 |
<5 | 91 | スライダー | 123km/h | ボール | 3 2 1 |
●6 | 92 | ストレート | 144km/h | ファウル | 3 2 1 |
<7 | 93 | スライダー | 124km/h | 四球 | 4 2 1 |
これだけスライダーを連投するのも配球としてどうかと思うが、それだけ濱口ー嶺井のバッテリーが中島を打ち取るのに苦労していたことが伺える。
こうしてみると、チェンジアップの軌道に慣れていない打者1巡目を抑えることはそれほど難しくなさそうだが、2巡目となると打者もそれなりに対応してくるため、濱口も苦しい投球を強いられる可能性が高い。より球速差のあるカーブを使ってみることで投球の幅は広がりそうな気はするが、今回の登板を経て、何かきっかけを掴んでいると今後も期待できるのではないかと思う。ポテンシャルの高さと課題が明らかになったプロ初登板だった。