時計仕掛けのロマック

横浜DeNAベイスターズ応援ブログ。外野席ではなく内野席から見るようなブログ。

倉本の不調とどう向き合っていくか。

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その表情は、悔しさだけでは無かった気がする。ヤクルトと開幕カード三戦目は、10回裏、鵜久森淳志の代打満塁サヨナラホームランという劇的な幕切れで勝負を決した。鵜久森が登場する前に、山田哲人か、あるいは白崎浩之佐野恵太がお立ち台に上っていてもおかしくは無い試合だったが、絶体絶命のピンチの場面で最高の投球を見せた両チームの救援陣の働きも大きかった。ベイスターズとしては、開幕カードを負け越してしまい、3試合で10打数1安打、打率.100とほとんど仕事をさせてもらえなかった筒香嘉智の不振がもたらす影響の大きさを感じた三連戦となってしまった。

もう一人、この3試合で苦しみ続ける姿を見せた選手がいた。レギュラーショートの倉本寿彦である。12打席0安打。打率.000。三振3。併殺打1。失策2。2日の試合では、1回裏に正面の打球をファンブルし、濱口遥大がヤクルト打線に掴まるきっかけを生み出し、9回裏の場面では大引啓次の放った三遊間のゴロをさばこうとするも、一塁手ロペスが取れない悪送球をしてしまう。記録には残らないが、坂口智隆のゴロ処理もあやうく内野安打になりそうなワンバウンド送球もあった。昨年のシーズン失策数は6。守備範囲は広くないが、正面に飛んできた打球を確実にアウトにする捕球動作とスローイングの正確さはセ・リーグでも屈指の水準だった守備の名手が、開幕三戦目にして守備を不安視されるようなっている。

打撃に関しても、昨年チーム最多安打を放ったバットからは未だ快音を響かせずにいる。特に気になったのは8回表の第4打席。ヤクルト・石山泰稚の4球目は真ん中に入ったストレートだったが、倉本は手が出なかった。見逃し三振に終わった打席からベンチに帰る際に表情がカメラに映し出されたが、悔しいというよりは諦めに近いような、気持ちが切れたような印象すら受けた。

まだ3試合を消化しただけである。今の時点で好調不調を考察しても仕方が無いのは承知だが、キャンプ、オープン戦、そして開幕三連戦と見続けていて、どうしても倉本の今年の成績を不安視してしまう自分がいる。昨年のような打撃の積極性、守備の確実性という持ち味が発揮出来ない状態を一番理解しているのはおそらく本人だと思うが。もがき苦しむベイスターズショートストップの現状を分析してみた。f:id:baymeshi:20170404001801p:plain

1.02 - Essence of Baseball | DELTA Inc.より引用。

実際にセイバーメトリクスの観点から見ると倉本の守備はどう映るのか。UZRなどの守備指標は、守備機会数が多いほど数値は良化するという指標であり、単純比較は出来ないが、3試合消化時点では総合守備評価であるUZRは数値上大きく改善されている。倉本の守備は堅実性に強みがあるため、昨年はErrR(守備の堅実性)がリーグトップの生成だったが、今シーズンは早くも2失策を記録しており、ErrRの数値は大きく悪化している。一方で、昨年から指摘されていた守備範囲に関しては改善され、RngR(守備範囲)0.7は現時点でセ・リーグ最高成績である。ちなみに、昨年この数値の成績が良かった巨人・坂本勇人が-0.2、広島・田中広輔が-1.6となっている。倉本は昨年の契約更改交渉で、守備範囲の狭さを指摘されている。おそらくシーズンオフから守備範囲拡大をテーマに守備練習に取り組んでおり、その成果は数値上出ているようだが、倉本の持ち味である、捕球してからスローイング体勢に入るまでの動作の速さ、そしてスローイングの正確さは昨年よりも悪化している事が、現状の倉本の守備ということになる。シーズンオフの時点でこの指標がどうなるのか気になるが、「守備が下手になった」というよりは「守備の特徴が変わった」と考えた方がいいのかもしれない。本当に守備が下手になったのなら全体的に指標が悪化しているはずなのだから。

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一方打撃面でもスタイルの変更があったのかと思い、昨年と打球方向の比較をしてみたが、こちらも打席数が少なすぎて単純比較は難しかった。とはいえ、倉本の特徴である逆方向にも打球を飛ばしており、長打を求めて引張り(右方向)に集中しているわけではなさそうだ。それでも、ほとんど差はないとはいえ右方向に一番打球が飛んでいることは考慮しておいたほうがいいだろう。そのうちヒットは出るだろうし、一本ヒットが出たら気が楽になり少しずつ調子を取り戻していくだろうが、社会人時代のように右中間を破るような当たりを追い求めていくようなら少し厳しい打撃成績になるかもしれない。

他にも選球眼の変化なども見ていたが、数値上は昨年と大幅に変化は無さそうだ。しかし、オープン戦でも何度か四球で出塁している場面があったが、今年は出塁意識を持って打席に立っているようにも見受けられる。もともとチームでも積極性が高い打者だったが、今年は慎重にボールを見極めることを意識しているのかもしれない。3割近い打率を残した昨年だが、出塁率の低さも指摘されており、守備範囲の狭さだけでなく、出塁率の向上もテーマとして取り組んでいるのでは無いかと勝手に推測した。

こうしてみると、完全に自分の憶測ではあるが、倉本は昨年出来なかったことを意識しすぎて、自分の持ち味を発揮できない状態が続いているのではないかと思った。おそらく真面目な性格の選手だと思う。そして、現状では走攻守全てにおいて自分の思うような状態ではないため、一軍の選手で最も精神的にも辛い状態を送っているのではないか。ネットなどでは、スタメン落ち、2軍落ちも検討すべきという声もあるが、ここの判断は非常に神経を使わないといけない場面だと思う。

山崎憲晴柴田竜拓を起用するのは簡単だが、昨年不動のレギュラーだった倉本のモチベーション低下を考えると迂闊な判断は出来ない。山崎や柴田が活躍して一気にレギュラーになればいいが、そう簡単には進まないだろう。昨年も不振のロペス、山崎康晃を我慢して起用し続けたラミレス監督だけに、まだまだ倉本を我慢して起用し続ける事は間違いないだろう。監督しては本当に起用法に悩む場面である。我慢の起用が実を結ぶ結果になれば一番だが、チームの負けが続くようになってくると采配に対する風当たりも強くなる。自分が監督なら、借金5をデッドラインとして倉本の復調を我慢し続ける起用をすると思うが、シーズン前、倉本を「不動のショートストップ」と言い切ったラミレス監督がどういう起用法をするのか興味深いところである。

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まだシーズンは始まったばかりである。苦しんだ分、壁を乗り越えた時にはもっといい選手なっているかもしれない。エラーした直後に田中浩康がすかさず倉本に声を掛けに言ったように、ファンも長い目で見守った方が良さそうだ。

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