時計仕掛けのロマック

横浜DeNAベイスターズ応援ブログ。外野席ではなく内野席から見るようなブログ。

佐野恵太の分析と課題を考える。

正直、無理はない。ドラフト直前に発売された野球太郎には、彼の名前はどこにも掲載されていなかった。ドラフト9位でベイスターズに指名された時、アマチュア野球を一年中観戦しているスポーツライター小関淳二氏は彼の特徴について、「リードオフマンタイプ」と評していた。桜井俊貴から打ったホームランを見てわかるように、彼は決して「リードオフマンタイプ」では無い。彼はどういったタイプの選手なのだろうか。残念ながら選手名鑑を見ても特徴は載っていなかった。明治大学時代は主軸を任されており、沖縄キャンプではフリー打撃で気持ちよく打球を飛ばしていたので、いわゆるスラッガータイプだと思っていたが、それだけでは無さそうだ。きっと高橋由伸監督も気になるところであろう。今回は84番目にドラフトで指名された左のスラッガー候補に注目してみた。

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佐野恵太 1994年11月28日

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【人 物】

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岡山県岡山市出身

広陵高校明治大学という経歴を持ったプロ野球選手は結構多い。佐野の1学年上には日ハムにドラフト1位で指名された上原健太がいた。他にも、広島・上本崇司、野村祐輔も佐野と同じ経歴でプロ野球の道を歩んでいる。ちなみに佐野は中学時代、「倉敷ビガーズ」という中学硬式野球チームに所属していたが、野村も同じチームに所属していた。倉敷ビガーズにとっては佐野が2人目のプロ野球選手輩出にあたる。当時は投手兼三塁手として活躍していたようで、2009年にはAAアジアチャレンジマッチ日本代表に選出されている。この時はソフトバンク・笠原大芽横浜高校時代プロ注目の選手だった山内達也が日本のエースだった。

広陵高校進学後は様々なポジションを経験する。2年生春から試合出場が多くなると、主に遊撃手と二塁手を任されるようになった。元々俊足巧打の1,2番タイプの選手だったようだが、チーム事情もあり強肩を買われて2年生秋からは捕手にコンバートされる。小関氏が「リードオフマンタイプ」と評していたのは、きっとこの時のイメージがあったからだろうと推測される。セカンドまで送球は1.88秒をマークしており、強肩捕手として注目されていたが、捕手としてのミットさばきやリード面に関しては、それほど評価が高くなかったようである。いわゆるユーティリティプレイヤーとして広陵時代は活躍していたが、県大会3回戦進出が最高成績で、甲子園出場は惜しくも果たせなかった。プロ志望届も提出せず、広陵OBが数多く在籍していた明治大学へ進学する。

明治大学では2年生から試合出場を果たし、3年生で一塁手のレギュラーを掴むようになる。秋リーグでは主軸打者として打率.277・本塁打2本・打点11の成績を残しベストナインに輝いている。この活躍について、本人は「1日1000スイングのノルマをこなしてスイングスピードにこだわった事」「体重が大学入学時から8キロ増え、長打力が身についた事」が大きな要因だったとインタビューで答えている。また、仲間に恵まれていたことも、佐野が成長する大きな要因だった。同級生にあたる中日・柳裕也、ヤクルト・星知弥、オリックス・中道勝士らの活躍に刺激を受け、一学年先輩には「雲の上の存在」と評していた阪神・高山俊と今年のドラフト候補である日立製作所・菅野剛士がいた。特に高山とは練習パートナーとして常に付き添っており、同じ左打者として色々アドバイスを受けていたそうである。その甲斐あってか、4年生になった2016年日米大学野球の代表候補50名の中に佐野も選出された。日米大学野球の日本代表には、濱口遥大、水野滉也といった後にベイスターズでチームメイトになる選手も選ばれており、代表合宿では紅白戦も行われていた。ちなみに濱口とも一打席対戦しているが、軍配は濱口に上っている。最終的には日本代表には選ばれなかったが、代表合宿で貴重な経験を得たことがプラスになったのか、大学最後の秋季リーグ戦では自己最高の打率.325をマークし、神宮大会では関西大学との一戦で右翼席中段に飛び込む2ランを放ちチームの勝利に貢献する。この時の打球も打った瞬間ホームランとわかる打球だった。伯父にあたる佐々木誠のような大舞台に強いバッティングはきっとプロでも見ることが出来るだろう。

【分 析】

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大学過去三年間の成績を見ると、年々試合数が増えるに連れて打撃成績も改善されていることがわかる。特に注目すべき点は、出塁率がここ二年間で大きく上昇している所である。数値が低いほど四死球を選ぶ(選球眼が良い)打席が多い割合を表す四死球率は2016年6.9%となっている。この数値は、筒香嘉智(6.45%)中日・平田良介(6.86 %)、阪神鳥谷敬(7.11%)、広島・丸佳浩(7.76%)といった、セ・リーグの中でも選球眼に優れていると言われる選手と比較しても良い成績を残していると言える。この点に関しては、本人は4年秋の神宮大会前のインタビューでこう答えている。

――今シーズン(4年秋季リーグ戦)は四球が10個でした
ボールボールで攻められて変化球が多くなって、東大戦くらいで今シーズンの攻め方は変わっているなと思ってました。フォアボールで出ても自分の中では全然オッケーって感じでした。特に後ろの人たちが調子良かったので何とか塁に出れるようにと。見極めできてたのはよかったです。でも途中から攻め方変わってるなと変に意識してしまって、手を出しづらくなってしまう時期もありました。今までやってきた積極的に打ちにいくというスタイルはずっと変えないように意識しながら打ちにいって、ボールは見逃すという感覚で打席に立たないといけないなと途中で改めて強く思って、シーズン通して打席にはいれたかなと思います。

引用:硬式野球部 (29)神宮大会前インタビュー 牛島将太、佐野恵太…明大スポーツWEB 明大スポーツ-明治大学のスポーツ新聞

元々積極的に打つタイプだったが、後を打つ打者も好調だったのでボール球を見逃す余裕が出てきた、という感じだろうか。練習試合やオープン戦の打席を見ていても、ボールゾーンの球は手を出さず、ストライクゾーンに甘く入った球をしっかり見極めてスイング出来ている。桜井俊貴から打ったホームランも、2ボールと打者有利のカウントに持ち込んでストライクを取りに行った所を狙いすまして打った印象である。また、数値が高いほど三振しにくい打者と評価される三振率は、最終学年で12.2%とこちらも大きく改善された。さすがにプロと大学生では投手のレベル差があるので、プロ1年目はそれなりに空振り三振を重ねたり、変化球に対応できずストライクを見逃しするケースは多いだろうが、巨人戦で田原誠次から二塁打を打った打席のように、ミート技術も優れていそうなので、ゆくゆくは二割後半~三割近い打率を目指せるだけの打撃センスは充分兼ね備えた選手だろう。

守備に関しては、元々二遊間を守っていたこともあり、一塁手としてはフットワークは軽い方だと考えている。大学通算63試合に出場してエラーはわずか2つという点を見ても、一塁守備に関しては問題なさそうだ。ただしベイスターズではロペス一塁手として不動の地位を固めているだけに、一塁手のレギュラー獲得は難易度が非常に高くなっている。そのため、しばらくは外野手としての適正を判断しながら起用されることになりそうだ。広陵時代は強肩として名を馳せただけに、コンバートが上手く行けば出場機会は大幅に増えるだろう。いずれは外野手以外でも、二塁手三塁手としての起用も検討した方がいいかもしれない。なお、足もそれなりに速いようだが、大学4年間で盗塁は0である。

【今後の課題】

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以上の点から、佐野恵太がベイスターズで一番タイプ的に近いのは宮崎敏郎だと考えている。宮崎もプロ1年目から猛打賞を放つなど、新人ながら打撃センスに溢れた選手だった。打撃技術も高い宮崎だが、昨年5番打者としてレギュラーポジションを掴んだ最大のポイントは、ボールを見極める選球眼に優れ、三振も少ないという特徴だった。この点は佐野も共通点が多いことから、いずれは宮崎のように中軸を任される選手になっていくことが期待される。

打撃に関しては、ストレートを上手く逆方向に打ち返すなど、ミート技術に優れている印象がある一方で、チェンジアップなどのブレーキング系の変化球に対しては体勢が崩されたり、空振りが目立つ打席があった。当然プロ1年目なので仕方ないといえば仕方ないが、いずれミスショットが減っていけばプロでも打率は残せるだろう。

守備は今のところ主に右翼手を守って問題なくこなしているが、内野はどのポジションも経験があるが、外野手はアマチュア時代そんなに経験ないはずである。そのため、プロ1年目の今年は外野守備を安定させることからスタートすることになりそうだ。

宮崎もルーキーイヤーの2013年、プロ初本塁打含む2本塁打で打率も.250とそれなりの結果は残していたが、出場試合は38試合に留まっていた。当時は二塁手三塁手を守っていたが、守備に関しては壊滅的な所からのスタートだったと記憶している。怪我や不調に悩まされた時もあったが、守備が安定していくにつれて出場試合は確実に増えていった。ラミレス監督からルーキーMVPに選ばれ、「明日開幕なら開幕一軍は間違いない」と言わしめた佐野だが、中途半端に代打で起用するよりは守備機会を増やす方針の方がいいかもしれない。ドラフト最下位指名というスタートラインから何人ごぼう抜き出来るか。全員ぶち抜いたら偉大な伯父を超える名選手になっている事だろう。

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