時計仕掛けのロマック

横浜DeNAベイスターズ応援ブログ。外野席ではなく内野席から見るようなブログ。

【3月16日】日ハム戦・石田健大、高校時代からのライバル有原にプロ入り後初めて投げ勝つ。

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視聴率25.8%。みんなが観ていた侍ジャパンイスラエル戦の裏で行われていた日ハムとのオープン戦。いつの間にかベイスターズは4連敗で借金1と苦しい状態になっているが、連日侍の4番・筒香嘉智が素晴らしい活躍を見せているおかげか、去年のオープン戦最下位をすでに経験しているからなのか、あまり悲壮感が漂っていないのが幸いである。ただし、今日の先発投手は開幕投手に内定している石田健大。ここで万が一炎上するようなことがあると少し心配になってくる。エースとして期待されているのならこの試合で連敗ストップを決めたいところだ。

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相手先発は同級生で同郷のライバルでもある日ハムの開幕投手候補・有原航平。前日にラインぐらいは送ってるかもしれないが、石田としても何が何でも敗けたくない相手だけに気迫の投球を期待したい。

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連敗中繋がりを欠いた打線が一気に爆発し、日ハムの開幕投手候補有原相手に14安打を浴びせる猛攻を見せた。初回から桑原、石川、佐野と3連打を見せ、わずか10球で先制。続くロペスも初球で犠牲フライを決め、初回に2点先制し試合を優位に進めることが出来た。スタメン起用に応えた関根は4打数4安打と大暴れ。先頭打者として2度ヒットを放ち、6回は一挙5点を呼ぶビッグイニングの口火を切った。打線の流れに乗って白崎も今年2度目の2ランを放ち、終わってみれば14安打9得点。連敗の鬱憤を晴らす攻撃を見せた。

先制点を貰った石田は低めに集める丁寧な投球で5回1失点の好投。被安打3、四球1で危ない場面はほとんど無かった。その後を受けたパットン、三上、山崎康晃はほぼ完璧な内容で無失点。オープン戦の連敗を4で止め、対日ハム戦の連敗も8で止まった。連敗中毎日記録していたエラーもこの日は無失策。試合後のラミレス監督のコメントも上機嫌で、気持ちよく横浜スタジアムへ帰ることが出来そうだ。

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【石田健大】◯

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高校時代からのライバル相手に堂々としたピッチングを披露し、5回1失点。許した安打は3本で、この試合のキーマンでもあった大谷翔平を2打数無安打に封じ込めた。ストレートの最速は144キロ。ただし3回以降は少し球速が落ち、平均球速は142~137キロほどだった。球速が落ちた分5回6回はランナーを背負う場面が続いたが、外角低めに上手く制球していたため連打を許さなかった。球種別の投球割合を見ると、昨年と比較してそれほど差は無いようだが、球威が落ちた中盤以降はストレートの比率を減らしてチェンジアップやスライダーを軸に配球していたようである。特にチェンジアップが有効で、ピンチの場面でもチェンジアップで凡打に打ち取ることが出来た。球威の落ちたストレートを西川遥輝に狙い打たれて長打を許したように、スタミナ面ではまだ課題もありそうだが、開幕に向けて順調な仕上がりは見せることが出来たのではないか。

【関根大気】◎

四打数四安打と固め打ちして猛アピールに成功した。第一打席は10球粘って有原の149キロのストレートを引っ張って一塁強襲の内野安打。第二打席は打者有利のカウントからセンター返し。第三打席も打者有利のカウントから逆らわずライト前にヒット。最終打席の第三打席はカーブを捉えて前進守備を破って三塁打と、ヒットの内容も良かった。ボールがよく見えているのか、球種に応じてしっかりミート出来ており、引っ張りだけでなくセンター返し、逆方向と相手の守備位置も確認しながら打っている印象である。このあたりは昨年の倉本寿彦のブレイクに近い印象なので、坪井コーチのアドバイスもあるのかもしれない。乙坂智、荒波翔も好調で、佐野恵太も結果を出しただけに外野起用がますます悩む関根の活躍である。

【白崎浩之】◯

今年二度目の2ランを含む2安打を放った。打ったのは有原の146キロのストレート。高めに浮いたとは言え、昨年はストレートの打率が.235と苦手にしていただけに成長を感じるホームランである。いつの間にかボールの引き込み方が変わった打撃フォームで、どこか福田永将っぽい感じもするが、逆方向にも強い打球が飛んでいるのでこのままフォームが維持できればキャリアハイの成績も期待できそうである。

桑原将志】◎

三安打猛打賞で一番打者の役割を充分に果たした。第一打席はショート石井一成が上手く処理できなかったという感じもする当たりで、第二打席はヒットエンドランで三遊間に飛ばし、なんとか食らいついたという桑原らしいヒットだった。第三打席は甘く入った武田久シュートを見逃さず強振し三遊間を鋭く破った。オープン戦通して桑原らしい粘り強さを見せる試合と、三振が目立つ試合と続き、好不調の波がある印象だが、この試合ではらしさを見せた。

山崎康晃】◎

この日の最速は147キロ。抑えのポジションを争うパットンも150キロ近いストレートで無失点投球を披露する中、山崎も三者連続三振で試合をきっちり締めた。ストレートに強い近藤健介からストレートで空振りを奪ったように、ストレートの力強さが戻ってきた印象である。ストレートの球威が優れているため、ツーシームも効果的で、この日投げた15球のうち、9球はツーシームだったようである。打者がルーキー森山恵佑、プロ6年目の大嶋匠と山崎のツーシームに慣れていなかったこともあるが、この日の投球に関して言えば文句なしだったと言える。

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【3月14日】日ハム戦・濱口遥大の投球を振り返る

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侍ジャパンvsキューバ戦の裏でひっそりと行われていた札幌ドームでのナイトゲーム。試合前にスタメン予定だった梶谷隆幸腰の違和感でスタメン回避するという事態に見舞われたが、代わって3番ライトに抜擢された乙坂智は現在打撃好調で、荒波翔、佐野恵太といったスタメンを外れた外野手達も好調を維持しているため、打線に関してさほど大きな影響はなさそうだ。オープン戦首位打者シリアコの前にランナーを貯められるよう、桑原将志田中浩康の1,2番の働きが鍵になりそうだ。

ベイスターズ先発はドラフト1位濱口遥大が先発。デーゲームでは広島のドラフト1位加藤拓也が5回1失点と好投し、オープン戦ながらプロ初勝利を挙げた。ロッテのドラフト1位佐々木千隼も12日にベイスターズ打線の前に立ち塞がり、5回7奪三振1失点の投球でプロ初勝利を手にしている。相手は昨年の日本一チームだが、強気のピッチングでプロ初勝利を物にしたい。ファイターズ打線は故障者が多いこともありベストメンバーを組めない状態ではあるが、この試合で大谷翔平が3番指名打者で復帰する。中田翔に代わる4番岡大海西川遥輝、近藤健介らはまだ本調子ではないとはいえ、大谷の前後にランナーを貯めると厳しい試合展開になりそうだ。

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大谷翔平の引き立て役になってしまった感のある試合ではあったが、濱口のデビュー戦としては上々だったのではないかと思う。日ハム先発の高梨はストレートに力があり5回無失点。濱口もランナーを背負う場面が続きながら粘り強い投球を見せ、5回2失点という結果だった。相手投手から点をなかなか奪えない試合展開で、先制点を与えてしまうとやはり分が悪い。課題の制球面も4四球と精度に欠いた部分もあるが、週末のウィーランド、クラインのように簡単に崩れることはなかった事は評価出来るのではないか。傾斜が高く、マウンドも硬い札幌ドームのマウンドは、濱口のピッチングを最大限に活かせる球場だったということもあるだろうが、この試合のような粘り強い投球ができればシーズンでも先発の役割を果たせそうではある。

打線は7回に二番手の谷元を攻め、好調シリアコ、白崎の二人でチャンスメークし、嶺井と関根の連続タイムリーで反撃。その後も最終回に鍵谷から逆転を狙うものの、結局5-3で敗北。オープン戦3連敗で2015年の交流戦から続く日ハム戦の連敗も7まで伸びた。(連敗は公式戦だけだが)

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【濱口遥大】△

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この日オープン戦初先発だった濱口遥大のデビュー戦は、5回を投げ97球、被安打3、与四死球4で2失点という内容だった。投球を振り返ってみると、ストレートに力がありこの日の最速は149キロ。平均でも145~147キロを計測しており、左投手としてはプロでも平均球速が速い部類になる。これだけでも充分武器になるため、コースに決まった時はなかなか打てないだろうという印象である。時折左打者の顔付近にボールが荒れる時があり、自分が打者なら対戦したくないタイプの投手である。

ストレートに球威があったため、決め球であるチェンジアップの精度も良かった。特に日ハム打線の一巡目はチェンジアップに対してかなり手を焼いていたようである。この日奪った併殺打は2つ。ランナーを背負ってもストレートとチェンジアップのコンビネーションで上手くタイミングをずらし、要所で内野ゴロを打たせることが出来ていたため、崩れそうで崩れない粘りの投球を見せることが出来た。

課題と言われた制球面は、前回登板のロッテとの練習試合に比べれば制球は安定したのではないか。基本的にはストライク先行の投球は出来ていたが、5回を投げ終わるのに97球を要し、四球も4つ与えている。ストライク先行のカウントに追い込まれるが、そこから並行カウント、フルカウントと簡単に討ち取られないように粘る打者が多いのは日ハム打線の特徴なので、濱口からすると少々相性の悪い相手だったかもしれない。

3回裏の先頭打者、中島卓也には

投球数球種球速結果BSO
<1 43 スライダー 120km/h 見逃し 0 1 0
<2 44 スライダー 117km/h 見逃し 0 2 0
●3 45 ストレート 147km/h ボール
[高めのつり球]
1 2 0
★4 46 チェンジアップ 124km/h ファウル 1 2 0
●5 47 ストレート 146km/h ファウル 1 2 0
<6 48 スライダー 129km/h ボール 2 2 0
★7 49 チェンジアップ 126km/h ファウル 2 2 0
●8 50 ストレート 149km/h ボール 3 2 0
●9 51 ストレート 147km/h ファウル 3 2 0
●10 52 ストレート 147km/h ファウル 3 2 0
●11 53 ストレート 145km/h ファウル 3 2 0
★12 54 チェンジアップ 128km/h ファウル 3 2 0
<13 55 スライダー 121km/h ファウル 3 2 0
●14 56 ストレート 147km/h 四球

4 2 0

2球であっさり追い込んでから14球粘られて先頭打者を歩かせてしまう。大学時代はカーブやフォークも試していたそうだが、試合で使える球種が少ない分、ストレートもチェンジアップもタイミングを合わされるとなかなか打者を打ち取るのに苦しむという課題が浮き彫りになった。

5回裏も中島卓也は7球粘って四球を選ぶが、

投球数球種球速結果BSO
<1 87 スライダー 119km/h 見逃し 0 1 1
<2 88 スライダー 120km/h ボール 1 1 1
<3 89 スライダー 121km/h ボール 2 1 1
<4 90 スライダー 121km/h 空振り 2 2 1
<5 91 スライダー 123km/h ボール 3 2 1
●6 92 ストレート 144km/h ファウル 3 2 1
<7 93 スライダー 124km/h 四球 4 2 1

これだけスライダーを連投するのも配球としてどうかと思うが、それだけ濱口ー嶺井のバッテリーが中島を打ち取るのに苦労していたことが伺える。

こうしてみると、チェンジアップの軌道に慣れていない打者1巡目を抑えることはそれほど難しくなさそうだが、2巡目となると打者もそれなりに対応してくるため、濱口も苦しい投球を強いられる可能性が高い。より球速差のあるカーブを使ってみることで投球の幅は広がりそうな気はするが、今回の登板を経て、何かきっかけを掴んでいると今後も期待できるのではないかと思う。ポテンシャルの高さと課題が明らかになったプロ初登板だった。

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オープン戦前半のMVPと日ハム戦の展望

f:id:baymeshi:20170314043926p:plainオープン戦7試合を消化し、4勝3敗のベイスターズ。昨年は梶谷隆幸の離脱や新外国人助っ人で中軸を期待されていたロマックの大不振もあって4勝9敗3分と大きく負け越して開幕を迎えたが、今年はすでに昨年の勝ち星に並び、負けた試合でも日替わりで活躍する選手が出てくるため、開幕に向けて期待が膨らむファンも多いのではないか。週末のロッテ戦では、今年初の横浜スタジアムに大勢のファンが訪れたが、残念ながら新外国人助っ人ウィーランド、クラインともに課題の残る登板となってしまった。それでも、11日は高崎健太郎が、12日はルーキー進藤拓也パットンが好投を見せ、何も収穫がない試合ではなかった。ベイスターズオープン戦は残り10試合。しかも、18日の阪神戦を除いてすべてパ・リーグ相手の試合なので、今後も新戦力を積極的に試すことになりそうだが、二軍で調整している石田健大井納翔一といった主力組もおそらく今週末頃には一軍に合流するだろう。となると、札幌で行われる日ハムとの3連戦は若手選手、新戦力選手にとっては貴重なアピールの場になるかもしれない。

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今日の先発投手はルーキー濱口遥大が予定されている。前回一軍で登板した2月23日のロッテとの練習試合では3回3失点だった。荒れた天候の中での登板だったこともあり、制球に苦しんだ前回登板だが、ストレートの調子も良くなかったせいか、決め球のチェンジアップも打者に見逃される場面が多かった。日ハムも中島卓也をはじめ、打者有利のカウントへ持っていく打者が多い印象なので、ボール先行になり、チェンジアップ頼りの投球になることだけは避けたいところである。今日の試合の登板が開幕ローテーション入りか、二軍降格かを決める重要な登板になると思うので、強気のピッチングを期待したい。

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さて、ここまでのオープン戦を見ていると、キャンプで活躍を見せられなかった野手の活躍が非常に目立っている印象である。二軍スタートになった柴田竜拓、荒波翔が途中出場で活躍を見せ、対外試合では存在感を見せられなかった関根大気オープン戦では打撃でしっかりアピールを続けている。下園辰哉後藤武敏といったベテラン勢は二軍調整中だが、開幕一軍入りも充分狙える位置におり、このまま好調を維持できれば柴田や荒波、関根も開幕スタメンが見えてくるだろう。沖縄キャンプで好調だったルーキー佐野恵太オープン戦でも結果を残し、白崎浩之、桑原将志、乙坂智、シリアコといった選手もここまで順調に来ている。特に、白崎とシリアコに関しては、ほとんどの試合に出場しているが打率は4割以上をキープし、得点圏打率も.429と勝負強さを発揮している。お互い三塁手のポジションを争うライバルだが、両選手とも好調だけにレギュラー争いがますます熾烈になってきた。打撃好調なベイスターズ打線を引っ張っているのは白崎浩之とシリアコでありこの2人オープン戦前半の野手MVPと言えるのでは無いか。

一方、キャンプMVPに輝いた嶺井博希、宮崎敏郎あたりは少し精彩を欠く場面が多くなっている。野手陣に関しては若手、主力関わらず好調な選手が多いので、開幕一軍入りを決めるのはまだまだ先になりそうだ。

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投手に関しては、全体的に好調な選手は少ない印象である。まだ気温も肌寒い3月上旬なので、今は調整段階の選手が多いだろうが、新外国人助っ人のウィーランド、クラインが結果を残せず、ルーキー尾仲祐哉も先発機会を上手く活かせなかった。先発投手陣が少し物足りない内容の試合が続いているため、今日の日ハム戦に先発予定の濱口遥大や平良拳太郎、熊原健人らが結果を残して先発枠争いの中心になってほしい所である。

一方、救援陣は好調で、主力組の三上朋也、須田幸太、山崎康晃、パットンあたりは順調に調整出来ているといっていいだろう。12日ロッテ戦で1回を投げ被安打5と打ち込まれた田中健二朗も次回は結果を残したいところである。好調なブルペン陣の枠に入ってきそうな平田真吾高崎健太郎、進藤拓也オープン戦で結果を残しており、救援陣の好調さが際立っている。特に高崎健太郎は11日のロッテ戦、炎上したウィーランドの後を受けてマウンドに上ったが、力強いストレートを軸にした投球でロッテ打線を封じ込め1回1/3を無安打3奪三振の好投。5日の楽天戦も2回無失点とロングリリーフとしてここまで完璧な投球を披露している。昨年の1軍試合登板数は0。キャンプは2軍でスタートし、決して周囲の期待は大きいものでは無かった。しかし今は、開幕一軍も狙える位置にまで這い上がってきている。長年の課題だった制球難もここまでは無四球と安定しており、勝負どころで三振を奪うあたりも近年では見られなかった姿である。期待も込めて、といってもいいが、投手陣に関しては高崎健太郎オープン戦前半のMVPだろう。

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【3月11日】千葉ロッテ戦・サム・ワン・イン・ザ・クラウド

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映画「ラ・ラ・ランド」では、アカデミー賞主演女優賞を獲得したエマ・ストーンがヒット作に恵まれない不遇の女優を演じている。幼少時代から夢憧れた女優を目指し、幾つもオーディションを受けていた。だが、門狭きオーディションの壁を超えることは決して容易では無い。たった1つのセリフを言うためのオーディションで、目いっぱいの演技を披露するも、オーディション審査員の返事は「もう充分だ」。そんな不遇続きの人生でも彼女は高らかに唄う。「きっとこれが本当のオーディション。群衆の誰であっても、誰かにとっての大事な人になれる。たった1つの作品をきっかけに人生は大きく変わるかもしれないのだから」

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今季初の横浜スタジアム。天候も良く多くの観衆が見守ったハマスタの真っさらなマウンドがウィーランドにとってのオーディション舞台だった。果たして主役の座を射止めることが出来たのか。でも、ブロードウェイ劇場を目指すのは止めてほしいところである。

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両軍合わせて29安打。おまけにエラーも5つ記録した。エラーランプが付かない不味い守備もあり、当然、凡事徹底を掲げるラミレス監督としても、勝利した伊東監督としてもおかんむりの試合内容であろう。先発ウィーランドは球威に欠き、味方の不味い守備もあって予定の6回まで持たず3回途中で自責点8と大炎上。その後を受けた高崎が流れを作ったが、田中健も味方守備に足を引っ張られ3失点。三上、山崎康らはきっちり仕事をしたが結果的には大量失点を喫して横浜スタジアム凱旋試合を勝利で飾れなかった。

打線も15安打を放ちながら12残塁。いい当たりは出るも相手守備の正面を突く打球が多かったという不運もあったが、崩れそうで崩れない場面を演出したのは千葉ロッテの捕手・田村龍弘だったように思う。涌井の立ち上がりを攻め1点を取り、なお1アウト満塁の場面。宮崎もフルカウントまで持っていったが、涌井ー田村のバッテリーは5秒足らずでサインを決めて宮崎をファールフライに仕留めた。1アウト満塁でフルカウント。自分なら絶対球種、コースの選択を迷う場面だが、涌井と田村のバッテリー間で意思疎通が充分取れていることがわかる場面だった。これで打たれていたら「慎重さが足りない」と言われる場面でもあるので結果論でもあるが、球種、コースの選択も間違えなかったのはさすがである。

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桑原将志】◎

この日の主役は桑原だった。3打数3安打3打点に全打席出塁と大暴れして打線を引っ張った。3打席目のホームランは外角に甘く入った球をしっかり捉えた桑原らしい打球だった。1打席目の出塁もフルカウントまで粘って逆方向に逆らわずヒット。先制点を奪われたベイスターズにとって、一番いい形で出塁したためすぐに反撃することが出来た。ここまでやや不調気味ではあったが、これからは本来の打撃に期待できそうである。ちなみに4打席目の死球は躱しながら肩に当たったのでそれほど大きな負傷にはならずに済みそうである。

田中浩康】○

2番打者として大きな仕事をした。初回、内角中心に配球していた傾向があったため、内角に入ったボールを強振し二塁打を放つ。2打席目も桑原に続いて連打を放ち見事タイムリーヒットを記録した。ここまで好調を維持しているが、このままいけば開幕戦スタメンも現実味を帯びてきそうな役割を果たしている。

高崎健太郎】○

ウィーランドの後を受けて1回1/3分を無安打無失点の好リリーフを見せた。完全に千葉ロッテに流れが行った試合展開になったが、高崎が登板して流れは少し落ち着いた。この日はストレート、スライダーともキレがあり打者4人から3三振を奪う完璧な内容。今年の高崎は一味違うという印象を与えているが、高崎の課題は常に好調を維持出来ないところにある。ストレートの調子が悪くなると、打者を抑えるのにかなり苦労する投球が目立つ高崎だったが、今年はどうなるか。今後も登板機会は増えるだろうし、より厳しい場面での登場も増えるだろう。どの場面でも安定して投球出来ることが出来れば、開幕一軍も充分果たせる。

【ウィーランド】✕

元々ストレートを軸にする投球スタイルだったが、この日は変化球主体の投球だったようだ。ストレートの球速は140キロ前後。失点を重ねた3回4回は130キロ後半だった。前回登板の楽天戦はナックルカーブ、チェンジアップも有効に使えていたが、ストレートの球威に欠いたこともあり、外角に外れる変化球はことごとく見逃され、タイムリーを放った田村には上手くカーブに対応された。味方のエラーもあり、苦しすぎるマウンドではあったが、課題も多く残された登板となった。ストレートの調子が良くない時、カーブ主体の投球ではやはり厳しいものがある。ツーシーム系の球種やカットボールといった変化球を試すのも必要なのではと感じた。

【嶺井博希】✕

キャンプ・練習試合では捕球、守備に関して特に問題なさそうだったが、オープン戦では守備のほころびが目立っている。この日も振り逃げしたボールを見失うという場面があったが、それ以上にマウンドへ声を掛けに言く場面が少なく、試合を上手くコントロール出来なかった印象が目立った。特にウィーランドは嶺井がサインを出した直後に投球動作を開始するなど、投げ急ぐ傾向があった。そのため、いつも以上に投手を上手くコントロールする必要があったが、その点に関しても対策が不十分だったように見える。このあたりの成績に見えない捕手の動作が上手だと感じるのが戸柱であり、嶺井や高城、黒羽根の課題だと思う。

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尾仲祐哉の分析と今後の起用法を考える。

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前回ブログを更新したのが3月3日なので、中7日空けての更新となる。先発投手ならローテーション通りである。しかし、更新をしばらく止めると閲覧者数が一気に減るというのがブログの恐ろしい所であった。更新していない間、筒香嘉智侍ジャパンの4番に座り、連日大活躍を見せていたのはご承知の通りである。ベイスターズオープン戦好調で、調整不足が心配されていた今永昇太オリックス戦で好投し、ルーキー佐野恵太も筒香不在を感じさせない活躍を見せている。ブログで取り上げたい話はいくらでもあった。何なら週末に観た「ラ・ラ・ランド」について、文字数の限界まで語りたいところである。でもあえて今回は、オープン戦で結果を残せなかった新人投手を取り上げたかった。ドラフト6位ルーキー・尾仲祐哉である。

キャンプでは小柄ながらキレのあるストレートが目を引き、キャンプ中盤ではすでに147キロをマーク。ロッテとの練習試合ではストレートとスライダーのコンビネーションが冴えて2回を投げて無失点。ラミレス監督も試合後「期待通りの活躍だった」と好投を評価するコメントを残し、首脳陣の評価はうなぎ登りだった。そして、満を持して先発マウンドに上った3月8日のオリックス戦。打者22人に対し92球を投げ、4回4失点という結果だった。被安打6、与四球4の内容以上に、マウンド上でもがき苦しむ姿が印象に残った。試合後、ラミレス監督は「先発投手として力がある」と前向きなコメントを残したが、好投を期待していたファンも、本人も、決して納得のいくマウンドでは無かっただろう。今後は2軍からチャンスを伺う事になりそうだが、きっと一軍マウンドで躍動する姿を何度も見ることになるであろう尾仲祐哉を分析した。

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尾仲祐哉 1995年1月31日(22歳)背番号29

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【人 物】

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福岡県北九州市出身

今永昇太と同じ街で生まれ、中学時代は共に軟式野球に打ち込んでいた。1学年離れているとはいえ、尾仲がいた則松中学校と今永がいた永犬丸中学校は隣の中学校なので、対戦した機会は何度かあったかもしれない。ちなみに阪神にドラフト2位指名された小野泰巳北九州市出身で、今永のことは幼い頃から知っていたそうである。小野も開幕一軍を狙える位置にいるだけに、同級生の同郷出身者には負けたくないところだ。その後、高稜高校に進学。悪役レスラー・デビル雅美の母校である。尾仲は2年生まで遊撃手のレギュラーだったが、投手に転向すると3年時にはエースの座を掴んだ。しかし、高校3年間で投手として実力を発揮することは出来なかった。最後の大会になる3年夏の県大会でも、尾仲擁する高稜高校は1回戦で姿を消している。濱口遥大にしても、笠井崇正にしても、高校時代は野球名門校では無かったので甲子園出場は叶わなかったが、2人共高校生の時点で球速は140キロを越しており、実力はプロスカウトも注目していた。しかし、尾仲に関しては球速は最速でも130キロ前半。おまけに夏の県大会は3年間全て1回戦敗退だった。それでも「高いレベルの野球を体験したい」という気持ちで大学のセレクションを受け、広島六大学リーグの強豪・広島経済大学へと進学が決まった。

ソフトバンク柳田悠岐を輩出した広島の強豪大学に入学するも、選手のレベルの高さに「ずっと球拾いをするだろう」と試合出場を叶えることすら半ば諦めていたようである。しかし、地道に動画で投球フォームを解析し、筋力トレーニングに励んだ努力が実を結び、1年秋リーグから先発投手としてマウンドに上がるようになる。このあたりは笠井と同じようなサクセスストーリーだが、尾仲は1年生の段階で50回を投げ、防御率0.89とエース級の活躍を見せた。球速も3年時には150キロに到達。4年春の全日本大学野球選手権では8回を投げて14奪三振と圧巻の投球を見せた。結局タイブレークの末に敗れることになったが、各球団のスカウトに尾仲祐哉の名を刻んだ事は間違いなかった。高校卒業時点ではMAX133キロだった投手が、MAX150キロのストレートとキレのあるスライダーを武器に奪三振ショーを繰り広げる事になるとは、おそらく本人も想像していなかっただろう。本格的に投手に転向したのが高校2年と遅いこともあり、まだまだ成長する可能性は秘めている。今後も楽しみな投手と言えるだろう。

【分 析】

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大学一年生の時から主力投手として活躍し、広島六大学リーグでは常に最高の成績を残していた。毎年投球回数以上の奪三振を記録し、2016年の奪三振率は12.60と圧倒的な成績を残している。与四死球率も毎年2点台を記録し、制球力も安定していたが、やはり大学とプロでは打者のレベルが違うため、ここまでの登板の印象ではやや荒れ球が目立っている。特に、外角からボールゾーンに逃げるスライダーは大学時代は空振りを狙える決め球だったが、オリックス戦ではことごとく見逃されていた。変化量が大きい分対応もしやすいといったところか。

投球スタイルとしては先発時は平均140キロ中盤~後半まで計測するストレートを軸に好調時はプロでも空振りが取れるほどキレがある縦スライダー、カットボール、フォーク、チェンジアップといった球種で打者を強引に抑える投球である。練習試合ロッテ戦やオリックス戦でもたびたび内角を強気に攻める投球が印象的だった。ストレートは綺麗な軌道をしており、手元でビュッと伸びる感じというか、ストレート系に強い打者でもゾーンに決まれば差し込まれるだけの威力はある。インステップ気味で腕の振りの速さが特徴的なフォームだが、対戦打者からするとタイミングが合わせやすそうな印象がある。自分が打者なら手元で伸びてくるストレートではなく時折甘いコースに入ってくるスライダーなどの球種に狙いをつけて打つだろうが、尾仲の場合チェンジアップという球速差を出せる球種も持ち合わせている。中継ぎ投手として起用するなら大学時代と同じようにストレート、スライダーといった球種を軸にしていけば打者を抑える力量は充分あると思うが、先発投手として起用するならチェンジアップやカーブといった球種を磨いたり、カットボールツーシームといった球種でもストライクを狙えるようになることが必要になっていきそうだ。

【今後の起用法】

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3月8日の神戸は雪もちらつく極寒の一日だった。最高気温は9.1℃。日中でもダウンジャケットを着ていないと凍える球場でのプロ初先発のマウンドだっただけに、結果を残せなかったのは仕方ないと言えば仕方なかった。尾仲の場合、腕の振りの速さも投球に関わる重要な要素だが、この日はストレートの球速も140キロ前半だった。これだけ寒いと、指の感覚も握力も本調子では無いだろうから、オリックス戦の投球だけで評価するのは少し尚早かもしれない。とはいえ、本人にとってもプロで活躍するには課題がいくつか見つかった登板にはなったのではないか。

ちなみに身長173センチと小柄な投手だが、プロで尾仲と同じぐらいの身長で右の先発投手となると、楽天美馬学(169センチ)、ヤクルト・小川泰弘(171センチ)オリックスのルーキー山岡泰輔(172センチ)ぐらいしかいない。小川はダイナミックな投球フォームで身長を感じさせない投球スタイルだが、尾仲や山岡が先発投手として活躍するには、前例を覆すだけの努力が必要になってくるかもしれない。右の中継ぎ投手で言えば、日ハム・谷元圭介(167センチ)、武田久(170センチ)、楽天・福山博之(172センチ)あたりが尾仲の身長に近いが、いずれも強気の投球スタイルがウリの投手で、尾仲の現状の投球スタイルとも合っている。そのため、尾仲の場合、中継ぎ投手として活躍するほうがイメージしやすいのかもしれない。ベイスターズの先発事情を考えると、右の速球派タイプである尾仲が先発として活躍すると戦力として大きいが、プロ1年目から活躍を狙うとなると中継ぎ投手として起用するほうが可能性は大きい気がする。このあたりは首脳陣も見極めが重要になってくるので、次回2軍戦での先発登板は尾仲の将来を決める大きなターニングポイントになっていきそうである。

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佐野恵太の分析と課題を考える。

正直、無理はない。ドラフト直前に発売された野球太郎には、彼の名前はどこにも掲載されていなかった。ドラフト9位でベイスターズに指名された時、アマチュア野球を一年中観戦しているスポーツライター小関淳二氏は彼の特徴について、「リードオフマンタイプ」と評していた。桜井俊貴から打ったホームランを見てわかるように、彼は決して「リードオフマンタイプ」では無い。彼はどういったタイプの選手なのだろうか。残念ながら選手名鑑を見ても特徴は載っていなかった。明治大学時代は主軸を任されており、沖縄キャンプではフリー打撃で気持ちよく打球を飛ばしていたので、いわゆるスラッガータイプだと思っていたが、それだけでは無さそうだ。きっと高橋由伸監督も気になるところであろう。今回は84番目にドラフトで指名された左のスラッガー候補に注目してみた。

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佐野恵太 1994年11月28日

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【人 物】

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岡山県岡山市出身

広陵高校明治大学という経歴を持ったプロ野球選手は結構多い。佐野の1学年上には日ハムにドラフト1位で指名された上原健太がいた。他にも、広島・上本崇司、野村祐輔も佐野と同じ経歴でプロ野球の道を歩んでいる。ちなみに佐野は中学時代、「倉敷ビガーズ」という中学硬式野球チームに所属していたが、野村も同じチームに所属していた。倉敷ビガーズにとっては佐野が2人目のプロ野球選手輩出にあたる。当時は投手兼三塁手として活躍していたようで、2009年にはAAアジアチャレンジマッチ日本代表に選出されている。この時はソフトバンク・笠原大芽横浜高校時代プロ注目の選手だった山内達也が日本のエースだった。

広陵高校進学後は様々なポジションを経験する。2年生春から試合出場が多くなると、主に遊撃手と二塁手を任されるようになった。元々俊足巧打の1,2番タイプの選手だったようだが、チーム事情もあり強肩を買われて2年生秋からは捕手にコンバートされる。小関氏が「リードオフマンタイプ」と評していたのは、きっとこの時のイメージがあったからだろうと推測される。セカンドまで送球は1.88秒をマークしており、強肩捕手として注目されていたが、捕手としてのミットさばきやリード面に関しては、それほど評価が高くなかったようである。いわゆるユーティリティプレイヤーとして広陵時代は活躍していたが、県大会3回戦進出が最高成績で、甲子園出場は惜しくも果たせなかった。プロ志望届も提出せず、広陵OBが数多く在籍していた明治大学へ進学する。

明治大学では2年生から試合出場を果たし、3年生で一塁手のレギュラーを掴むようになる。秋リーグでは主軸打者として打率.277・本塁打2本・打点11の成績を残しベストナインに輝いている。この活躍について、本人は「1日1000スイングのノルマをこなしてスイングスピードにこだわった事」「体重が大学入学時から8キロ増え、長打力が身についた事」が大きな要因だったとインタビューで答えている。また、仲間に恵まれていたことも、佐野が成長する大きな要因だった。同級生にあたる中日・柳裕也、ヤクルト・星知弥、オリックス・中道勝士らの活躍に刺激を受け、一学年先輩には「雲の上の存在」と評していた阪神・高山俊と今年のドラフト候補である日立製作所・菅野剛士がいた。特に高山とは練習パートナーとして常に付き添っており、同じ左打者として色々アドバイスを受けていたそうである。その甲斐あってか、4年生になった2016年日米大学野球の代表候補50名の中に佐野も選出された。日米大学野球の日本代表には、濱口遥大、水野滉也といった後にベイスターズでチームメイトになる選手も選ばれており、代表合宿では紅白戦も行われていた。ちなみに濱口とも一打席対戦しているが、軍配は濱口に上っている。最終的には日本代表には選ばれなかったが、代表合宿で貴重な経験を得たことがプラスになったのか、大学最後の秋季リーグ戦では自己最高の打率.325をマークし、神宮大会では関西大学との一戦で右翼席中段に飛び込む2ランを放ちチームの勝利に貢献する。この時の打球も打った瞬間ホームランとわかる打球だった。伯父にあたる佐々木誠のような大舞台に強いバッティングはきっとプロでも見ることが出来るだろう。

【分 析】

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大学過去三年間の成績を見ると、年々試合数が増えるに連れて打撃成績も改善されていることがわかる。特に注目すべき点は、出塁率がここ二年間で大きく上昇している所である。数値が低いほど四死球を選ぶ(選球眼が良い)打席が多い割合を表す四死球率は2016年6.9%となっている。この数値は、筒香嘉智(6.45%)中日・平田良介(6.86 %)、阪神鳥谷敬(7.11%)、広島・丸佳浩(7.76%)といった、セ・リーグの中でも選球眼に優れていると言われる選手と比較しても良い成績を残していると言える。この点に関しては、本人は4年秋の神宮大会前のインタビューでこう答えている。

――今シーズン(4年秋季リーグ戦)は四球が10個でした
ボールボールで攻められて変化球が多くなって、東大戦くらいで今シーズンの攻め方は変わっているなと思ってました。フォアボールで出ても自分の中では全然オッケーって感じでした。特に後ろの人たちが調子良かったので何とか塁に出れるようにと。見極めできてたのはよかったです。でも途中から攻め方変わってるなと変に意識してしまって、手を出しづらくなってしまう時期もありました。今までやってきた積極的に打ちにいくというスタイルはずっと変えないように意識しながら打ちにいって、ボールは見逃すという感覚で打席に立たないといけないなと途中で改めて強く思って、シーズン通して打席にはいれたかなと思います。

引用:硬式野球部 (29)神宮大会前インタビュー 牛島将太、佐野恵太…明大スポーツWEB 明大スポーツ-明治大学のスポーツ新聞

元々積極的に打つタイプだったが、後を打つ打者も好調だったのでボール球を見逃す余裕が出てきた、という感じだろうか。練習試合やオープン戦の打席を見ていても、ボールゾーンの球は手を出さず、ストライクゾーンに甘く入った球をしっかり見極めてスイング出来ている。桜井俊貴から打ったホームランも、2ボールと打者有利のカウントに持ち込んでストライクを取りに行った所を狙いすまして打った印象である。また、数値が高いほど三振しにくい打者と評価される三振率は、最終学年で12.2%とこちらも大きく改善された。さすがにプロと大学生では投手のレベル差があるので、プロ1年目はそれなりに空振り三振を重ねたり、変化球に対応できずストライクを見逃しするケースは多いだろうが、巨人戦で田原誠次から二塁打を打った打席のように、ミート技術も優れていそうなので、ゆくゆくは二割後半~三割近い打率を目指せるだけの打撃センスは充分兼ね備えた選手だろう。

守備に関しては、元々二遊間を守っていたこともあり、一塁手としてはフットワークは軽い方だと考えている。大学通算63試合に出場してエラーはわずか2つという点を見ても、一塁守備に関しては問題なさそうだ。ただしベイスターズではロペス一塁手として不動の地位を固めているだけに、一塁手のレギュラー獲得は難易度が非常に高くなっている。そのため、しばらくは外野手としての適正を判断しながら起用されることになりそうだ。広陵時代は強肩として名を馳せただけに、コンバートが上手く行けば出場機会は大幅に増えるだろう。いずれは外野手以外でも、二塁手三塁手としての起用も検討した方がいいかもしれない。なお、足もそれなりに速いようだが、大学4年間で盗塁は0である。

【今後の課題】

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以上の点から、佐野恵太がベイスターズで一番タイプ的に近いのは宮崎敏郎だと考えている。宮崎もプロ1年目から猛打賞を放つなど、新人ながら打撃センスに溢れた選手だった。打撃技術も高い宮崎だが、昨年5番打者としてレギュラーポジションを掴んだ最大のポイントは、ボールを見極める選球眼に優れ、三振も少ないという特徴だった。この点は佐野も共通点が多いことから、いずれは宮崎のように中軸を任される選手になっていくことが期待される。

打撃に関しては、ストレートを上手く逆方向に打ち返すなど、ミート技術に優れている印象がある一方で、チェンジアップなどのブレーキング系の変化球に対しては体勢が崩されたり、空振りが目立つ打席があった。当然プロ1年目なので仕方ないといえば仕方ないが、いずれミスショットが減っていけばプロでも打率は残せるだろう。

守備は今のところ主に右翼手を守って問題なくこなしているが、内野はどのポジションも経験があるが、外野手はアマチュア時代そんなに経験ないはずである。そのため、プロ1年目の今年は外野守備を安定させることからスタートすることになりそうだ。

宮崎もルーキーイヤーの2013年、プロ初本塁打含む2本塁打で打率も.250とそれなりの結果は残していたが、出場試合は38試合に留まっていた。当時は二塁手三塁手を守っていたが、守備に関しては壊滅的な所からのスタートだったと記憶している。怪我や不調に悩まされた時もあったが、守備が安定していくにつれて出場試合は確実に増えていった。ラミレス監督からルーキーMVPに選ばれ、「明日開幕なら開幕一軍は間違いない」と言わしめた佐野だが、中途半端に代打で起用するよりは守備機会を増やす方針の方がいいかもしれない。ドラフト最下位指名というスタートラインから何人ごぼう抜き出来るか。全員ぶち抜いたら偉大な伯父を超える名選手になっている事だろう。

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あえて今、「筒香を三番で起用すべきか」考える。

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2010年のサッカーワールドカップ南アフリカ大会直前、ほとんどのサッカーファンは岡田武史率いる日本代表に何も期待していなかった。大会直前に行われたキリンカップで日本代表は宿敵韓国相手に2-0で敗北する。宿敵に勝って大会前に勢いをつけたいという思惑とは裏腹に、単調なパス回しに終始する日本代表の姿を見て絶望感を抱いた者は私だけでは無いはず。進退伺を出すほど大会前に追い込まれた岡田ジャパンだったが、南アフリカに乗り込んでも調子は上がらず、イングランドコートジボワールと立て続けに連敗した泥沼状態で大会初戦のカメルーン戦を迎えた。結論から言えば、韓国戦の敗戦から大幅なフォーメーションシステムを変更したことが功を奏して、前評判を覆す一次リーグ突破を果たしたのだが、今回の野球日本代表もあの時と同じような空気が流れていることを感じている。小久保裕紀率いる侍ジャパンは台湾リーグ選抜との壮行試合に臨むものの、台湾の若きスーパースター王柏融の前に呆気なく屈した。WBC一次ラウンドは3月7日から始まる。正直色々試すには期間が短すぎるが、小久保監督は打線の並びや守備シフト、投手起用のバリエーションを色々試してほしい。

そのため、「四番は筒香で固定する」と小久保監督が明言した時は正直不安だった。野球とサッカーは全く別のスポーツなので比較しても仕方ないのだが、本田圭佑をワントップ(というかゼロトップ)に起用したことが一次リーグ突破に繋がったように、短期決戦においてはあまり固定概念に囚われない方が好結果を生み出すような気がする。2009年のWBCでも最初は四番に稲葉篤紀を起用していたが、最終的には城島健司が四番に座っていた。昨日の試合を見る限り、筒香には何も問題なさそうだが、本戦では一番調子が良い選手が四番、というシンプルな考えの方が良いかもしれない。

ちなみに「四番は筒香で固定する」という発言はラミレス監督も去年からずっと言い続けている。ペナントレースにおいては打線の中核を担う四番打者をコロコロ替えるのは良くないという発想だろう。昨年の二冠王であり、間違いなくベイスターズの主砲である筒香嘉智の四番起用には何の問題も無いが、個人的には筒香を三番で起用しても面白いんじゃないかなと思っていた。かつては松井秀喜も三番を打っていたし、メジャーのチーム最強打者はほとんど球団が三番を任されている。今回は筒香を三番で起用することで生じるメリット、デメリットを考えてみた。

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筒香嘉智を三番で起用する場合、替わりに入る四番打者は必然的にロペスになる。当然、ロペスが昨年のような活躍を見せることが前提ではあるが、長打力に関しては筒香と遜色ないので、四番で起用しても問題ないだろう。

表にも書いたが筒香三番起用の最大のメリットは、出塁率の高い一、二番打者の後を打つことが出来るため、ランナーがいる状態で打席に入る可能性が高くなる事である。昨年、筒香はランナーがいない時の打率は.294だったが、ランナーが一人でもいると打率は.357まで上昇している。出塁率.356の桑原将志出塁率.359の梶谷隆幸の後に後ろに筒香が入ることで、相手投手の立ち上がりを崩すような展開も多くなるのではないかと期待出来る。

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昨年のベイスターズにおける打順別打撃成績を見ると、二番打者が打率.201と低迷していたことがわかる。一番多く二番打者としてスタメン起用されたのは石川雄洋で、次にエリアン、荒波翔と続いたが、シーズン通して二番は固定できなかった。このため、切り込み隊長の桑原が出塁しても二番で流れが止まる、といった場面は多かった印象がある。優勝したカープはほぼ全試合菊池涼介で固定されていたため、二番打者の打率が.309とリーグで一番高い打率だった。カープの場合、一番・田中広輔、三番・丸佳浩も好調だったのも大きかったが、上位打線の打率が高いほど打線の攻撃性が向上するのは間違いない。ラミレス監督が梶谷の二番起用にこだわっていたのはそういう理由が大きいためだろう。

また、打席数が四番と比べて確実に増えることも、筒香を三番に置くメリットである。三番なら初回に確実に打席が回ってくる。相手投手からしたら立ち上がりで筒香を迎えるのは嫌であり、その前を打つ桑原、梶谷も決してアウトが取りやすい打者ではないので一、二番に対しても慎重に攻めざるを得なくなる。昨年、ベイスターズはイニング中盤の五回、六回に得点を上げることが多かったが、初回から点が入ると試合展開も優位に進めることが出来るため、三番筒香で初回から先制点を狙っていきたい。

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一方、筒香を三番で起用することで必ずしも成功するとは限らない。チャンスで打席に回ってくる確立はおそらく四番の方があるだろう。こうなると「三番打者最強説」と「四番打者最強説」の論争になってくるが、得点圏に強い筒香を三番に置き、得点圏にそれほど強くないロペスを四番に置くことで却って打線が低迷する可能性もある。また、この打順は筒香の前を打つ桑原、梶谷、後を打つロペスが昨年のような成績を残すことで成り立つものであり、前後の打者が不調だと却って筒香との勝負が容易になる可能性がある。チームの顔とも言える主砲・筒香嘉智をあえて四番ではなく三番に置くべきか。リスクもあるが試してみても面白いのではないかと個人的には思っている。侍ジャパンにおいても三番筒香、四番中田翔なんて打順を一度試す価値はあるように思う。変にこだわりすぎて失敗する姿だけは見たくないものである。

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